さる小説の孔明について、思い出していました。初めて読んだ時から10年以上経ちますが、忘れ得ない内容でした。実兄から冷たくされたり、職場で孤立したり、女部下から距離を置かれたりといつでも散々なのに、作者からの絶え間ない愛を感じる不思議な小説。どう散々なのかと言いますと、以下の通りです。
■実は諸葛瑾と章氏の不義の子 (年齢的に無理があるので、多分誰か年齢をごまかしている可能性がある。その後の進展からすると、やたら老いない孔明が10歳程、作中の公表年齢より若かったのでは。父子ほど年の離れた兄弟っていうだけで美味しいので、特に突っ込まない。実父(実兄)から発覚を恐れて捨てられたらしい。)
■玄叔父ちゃんが(以下略) ■今後の命運がかかった出張先でハラスメント騒ぎ (ハラスメントとしか言いようがないが、「ハラスメントを越えたハラスメント」と言える。ハラスメントしている方は罪悪感がないという、分かりやすい例。ハラスメントしている方をかばってはならない気もするが、彼を越えられる男は洋の東西を越えてもいないのだ。)
■数少ない友人を窮地に追いやり、困らせる。 (徐君大好き。でも彼は孔明から離れて正解だった気がする。) ■数少ない友人と無駄な争いをし、暗殺する。 (子元の死は奇襲のためもでいいと思うが。小説に膨らみをもたせる意味の暗殺だったとしても、個人的な鬱憤晴しにしか見えない気がする。)
■劉備三兄弟及び周囲の文武官と打ち解けない (ここは大体の三国志ものと同じ。) ■正妻の黄夫人が物語の早い段階で自害してしまう。 (孔明を小説として扱う場合、黄夫人がいないと寂しくなると思うのだが、長期連載になることを想定していなかっただろう段階だったのか、彼女は退場してしまう。)
■忠実な女部下がいるが、「なんであたしがこの人のこと心配しないといけないの?」とか思われている。 (仕事しか興味のない男なので、実際つまらない上司だったろうなあと思う。) ■見込んだ部下からある理由で毛嫌いされる。 (晩年の孔明と姜維の信頼関係は三国志終盤の癒しだが、作者は遠慮無く切り捨てた。でも毛嫌いされて背かれる理由が書き込まれているので、仕方ないかなと思う。)
いいとこなしの彼ですが、不思議と作者から大事にされているんだなと思う節があります。恐ろしい事に、この小説は時系列的にも、地理的にも、文化史的にも滅多に見られない程正確です。扱っている歳月もきちんと書き込まれています。
構成がぞんざいな所や、現代流に彼等を解釈する様な過ちは、ほとんどありません。特に劉備が来てからの蜀の内情や、軍隊、奥向き、政治の話などがここまで書かれた小説はとても少ないでしょう。ちょっとした歴史小説とも比肩する内容ですが、読んだ人だけがそれを知っていればいいと思います。
平成23年12月14日 竹淵 拝 madeingermany193☆yahoo.co.jp ☆→@ |
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