四国より帰ってきました。伊予電鉄の路面電車&郊外電車、坊っちゃん電車に出会い20年来の恋をかなえたり、松山城に登ったり、道後の本館に入ったりと素敵な旅でした。みかんジュース、みかんゼリー、美味しい和菓子にいいお風呂とよかったです。
高松市上陸記については、思い出すと(鼻血で)自宅の部屋の畳が何かあった後の様に真っ赤に染まると思うので、少し間を空けて書ければと思います。自分は群馬在住なので、車のナンバーは群馬ナンバーですし、ちょっとした証明書なら「群馬」県知事の名前で発行されます。慣れている地名と、慣れてない地名の違いを感じました。もっとも「高松」って人名としても地名としても全国で見かけるものですが。
訪ねたのは松山と高松・金比羅だけでしたが、四国全域を覆う様なICカードが出来るのはかなり先だと思います。ことでん、伊予鉄はそれぞれでICカードを持っていましたが、松山〜高松間が既に群馬〜東京間くらい離れています。スイカは「新宿から渋谷に出かけれて、メトロにもJRにも東急にも使える」という感覚のICカードです。四国の都市同士の間隔がここまで離れていると、かえってスイカ等の長所が生かせないでしょう。
以下は雑感です。
■南国&PAPUWAのキンタローの名前は、香川の金比羅様からもらった様な気がする。グンマの名前はルーザー様の奥方にあたるはずの女性の出身地が群馬と思われるが、若干余所余所しく、計算高い「グンマ」という名前に比べると、ストレートに子供の幸せを願う名前を思いついた(思い出した?ルザ様と話し合った事がある?)事は、高松のキンちゃんへの本気度の表れだと思う。
高松はジャンそっくりなシンタローに出生直後から親近感を抱きにくかったし、グンマには自身への義務の様な思いも強かっただろうけど、キンちゃんを目の前にすると「ルーザー様が私のために残して下さった大切な子供」と信じられたのでは。ルザ様がキンちゃんをもうける事を決めたのは一族の習いだと思うけど、高松がいなかったら「キンちゃん」という存在をルザ様が望んだかさえも分からない。自分が早晩高松の側にいられなくなる予感がしてそう決めたのかも。
ルザ様は高松をジェンダーとして「女性」の様に扱う事は好まなかっただろうけど、「息子の養育係」として半ば強引に側に置くつもりだったと思う。高松なので無理強いしなくとも喜んで幼キンちゃんの面倒を見ると思うけど、高松に妙な噂でも立って、自分の手の及ばない所で高松が困りでもすればと思い、「僕が無理に高松にやらせている」という態度を取りそうなルザ様。既に高松には手遅れの配慮であるし、高松が養育担当を辞するのはかなり遅い24年後だったりする。
■松山というか高松市上陸の際に自分の鞄に入っていた本が、「瘋癲老人日記」「痴人の愛」「夢の浮橋」「少将滋幹の母」であった事を思うと、自分の頭が浮かされていたのは暑さのせいではないかもしれない。いずれもあらすじは知っていたけど、ちゃんと読んだのは初めてだった。または学生時代に読んだけど、理解できなかった小説。道中全部読んだ。
「夢の浮橋」は小説の骨組みはいいと思うけど、内気な父子と、痴女と呼ばれても否と言えない不思議な後妻の話だった。谷崎が好んで書く「身近過ぎる女性との火遊び」を扱ったと言えるが、主人公の青年に率直さが足らないと思う。失った実母と父の若い後妻のイメージを重ねようとする所まではいいと思うけど、あれでは主人公の親戚が言うように、武は主人公と後妻の子供であった方が話が成り立つと思う。
「正常な」異性関係を加齢その他のために味わえなくなった男が、妻や妹など身近な若い美女と、自分が親近感を持っている若者を頭の中でどうこうして何だかんだという小説なら、谷崎の得意な分野であるし、「愚か」な男を書けば谷崎の右に出る者はいない。でも「夢の浮橋」は主人公が受身で居続けるので、告白調の小説でありながら感情移入が難しい。後妻についても谷崎はいつもそうだけど、悪女か痴女に見えてしまう。
主人公が異母弟を無理にでも探し出して一緒に住まわせ、「父とも継母とも若くして別れた自分の様な寂しい思いをさせたくない」と言い切った場面を見ると、男の子は主人公の異母弟ではなくて実子じゃないかと思う。読者には「自分は幼い頃母と死別して寂しい」と何度も訴える割に、実は父の若い後妻と異性として関係しているあたりが正直でないと思う。
谷崎の小説の場合、恋される女性と言えども恋した男の「願望」を満たす事にのみ存在価値を与えられるので(例ナオミ、春琴、雪子、刺青等)、曖昧に「母への思い」を若い継母にぶつけるだけでは尋常に過ぎるのかもしれない。大体普段、足、足、足と全項に渡って叫ぶかの如く自分の願望を女性に押し付けてやまない谷崎の書く男達が、「夢の浮橋」では「母への思い」にかこつけて義母と悪い事をしたり、息子と後妻がどうこうというシチュエーションを夢想かつ現実にし、実際に主人公の「異母弟」が出来てしまい右往左往するのが普通過ぎると言おうか、谷崎らしくないと言おうか。 |
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