■恋愛ものをあまり読まないので、物言わぬ鉄に癒されるのですが、鉄作品というと鉄そのものの話ではなく、鉄にまつわる人の物語になるのは自然な流れかもしれません。上越新幹線も「新潟と東京を結ぶ」という強い意志の下、出水にもめげずに生まれましたし。人間に癒されないから、鉄に癒されたいと願うのは誤りかもしれません。(漱石の行人の一郎みたいだ)
嫌な事があった時に新幹線に乗車し、何も聞かず、何も言わないで自分を一時間でも二時間でも包んでくれたたくましい「上越新幹線」に恋心を抱いたのですが、あの気持ちは何だったのでしょう。
■「自分が好きになれる方法」等のタイトルの本を割と見るので、世の中には自分の事を嫌いになりそうな人の方が多いのかもしれません。「お前が俺のために戦ったら友達にしてやる」というセリフを吐けるくらい自分大好きなキャラにはシンタローの外まだ出会っていません。いたとしても悪の組織の親玉が、自分に惚れている女性幹部に優しく接して、彼女を自主的に玉砕させる場面を想像します。
そんなひどい扱いを受けてもアラシヤマは幸せらしいので、まだいいかなと思います。痛いのは高松です。高松は仕事や研究を頑張って、ルーザー様に褒めてもらいたくてならないのに、そんなに頑張らないサビがルーザー様に猫かわいがりされるのですから。
■今年のカレンダーに「今月の名言」が書いてありまして。「愛には愛で報われ、仕事には仕事で報われる」とありました。人を愛するのに相手が「有能」かどうかはあんまり関係ないし、仕事に誠実な人が好感をもたれることはあれど、即恋愛成就にはつながらないでしょう。
ルーザー様に自分の事を好きになって欲しいと願う高松が、どうすればよかったのかは私には分かりません。高松も「ルーザー様に個人的には振り向いてもらえないだろうから、せめて自分は仕事をいっぱいして喜んでもらおう」と思っていそうです。
そんな悲しい「仕事」ってそうそうないと思います。単なる仕事好きじゃないですか。マクロスFのランカのよく分からない点、「アイドルになってアルト君とも恋人になる」というのが自分には分からないのですが、高松は「(成功して)ルーザー様に好かれる」という見返りすらろくに求めないので困った子です。
■高松の内向的な恋心をぶつけられているルーザー様ですが、キラキラしい身内ばかりに目が行っていても、「僕の息子を育てるのは高松」と思っていそうです。それだけ高松の信頼が厚いのか、高松は都合のいい存在なのか。
研究に仕事に頑張る高松の気持ちに「愛」が見え隠れしている事をルーザー様が気が付かれていた事を祈ります。高松の思い通りの「愛」への返答はしなかったと思いますが、高松が自分自身を好きになってもいいくらい、ルーザー様は高松を認めていたと思っています。
キンタロー坊ちゃんが家庭教師・高松に日々世話されながら「俺はお前が好きだ。ずっと俺の側にいて欲しい」と口に出して言い(直球なのは高松似)、「高松は僕と一緒にいるんだ」と息子に負けじと言い返すルーザー様っていないでしょうか。 |
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