・一年ぶりに谷崎の細雪を読もうと思います。半ば暗記している気がしますが文章が美しいので何度でも読みます。谷崎は東京市蠣殻町生まれの関東人でした。湯河原で没したのは当時の文人だからではなく、かたくなに関東を拒んでいたからかなとちょっと思いました。
嫌なものを拒むのは誰にでも出来そうですが、代替を自分で創作してしまうのが谷崎の偉い所だと思います。京阪神の古いお金持ちの御家庭の御婦人の暮らしなんて、谷崎が自分で請い求めなかったら知る由もなかったはずです。
・高松は、ルーザー様が兄を崇拝し、弟達を溺愛する部分が直視出来なかったと思います。そういうファンタジックな部分がルーザー様の原動力なので、彼が精力的になる原因を自分がどうこう言うもんでもないと思っていたでしょうか。
頭で考えたくらいで嫉妬というか、鬱屈を薄らげるのは難しいです。高松はルーザー様が自分に向けてくれるいいものまでシャットアウトして、自分を保っていたのかなと思います。ルーザー様を完全にアイドル視すれば高松は傷つかないと思いますが、ルーザー様は何故高松がすねたままなのか分からず困惑していそうです。
・数十年後に高松は、キンちゃんを指導する立場になります。自分が教える側になったせいか、高松が昔ほどイライラすることは無くなったのではと思います。ならキンちゃんが、「高松はどうせ父さんが好きなだけで、俺なんてどうでもいい」と思うかというと、思わない気がします。
最初南国で二次創作を書き(描き)出した時、もっとキンちゃんはルーザー様に嫉妬するかなと思いました。意外とそうならず、自分の本のキンちゃんは高松の気持ちを疑っていません。カップルと言うより、母子関係に近いので、むしろルザ高やルーザー様&キンちゃんの関係より、盤石なのかもしれません。
伯父達はお父さんの存在を汚点ととらえているので、キンちゃんがお父さんの話を聞けるのは主に高松からです。まるでまだ父さんが生きているかのように、高松は嬉しそうに父さんについて語るでしょう。
あんまり父の話をする高松が生き生きしているものだから、嫉妬の感情とかあんまり浮かばないキンちゃん、というか父さんの思い出話をするなと高松に命じたら高松がどうかしそう。
・ルーザー様にとって兄は神、弟2人はエンジェルですが。20年くらい一緒に過ごして来て、他の印象はなかったのか気になります。
ルーザー様は一途な人なので、兄弟の少々の短所や欠点は気にしないで、「僕が代わりに汚い事をしよう」「お前達は何もしなくていいよ」という思考に走って行った気がします。知性豊かな人とは逆に端的になりやすいとか聞きますが、まさにそうかもしれません。
シンタローの代になると、何故かその弊害は減り、一族の間の閉鎖性が薄らぎます。青の一族が一族と呼べる程の人数が保てなくなったのが一番大きい理由でしょう。
・ルーザー様を恋い慕う前から、高松はえらい人の下についてしまったと思ったでしょう。高松の事だから、武功を上げるより、補給の方にでもなろうと思ったかもしれませんが、思った以上に過酷だったのでは。
よく言えば一途、よく言わなければ常人の理解を越えたルーザー様に対し、高松は何か近寄れないものを感じたと思います。ルーザー様は頭のいい人だから、目に入り耳に聞こえたものが有用なら取り上げると思うので、なおのこと彼の中にある不文律が高松は憎らしかったろうと思います。
自分がどんなに頑張っても、彼を恋い焦がれても、彼の兄弟というだけではじかれる何かがあったろうと思います。
その壁は確かにあったでしょうが、ルーザー様を一番理解し、またルーザー様からある意味最も労力を引き出せたのは高松だろうと思います。神や天使に仕えるファンタジックな感情でなくて、人と人の普通の関係を彼とただ一人結んだのは高松なのかなと思います。 |
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