 ■思い通りの乗り鉄を妄想し、試算したら宿泊代込みで6万くらいでした。宮脇氏が国鉄完乗のために買った切符代、広尾から枕崎までの切符も確か6万円くらいだったと覚えています。
「高いと思わなかった」という宮脇氏の弁ですが、高いと思わなかったという事は、「6万円あればこんなことも出来る」という別案が、浮かばないでもなかったという事でしょう。
氏は完乗を目指している中で風邪をひいた時、「風邪をひいていて、心身をやられている時にはかえって正気になって、鉄道を乗るためだけに外出しようと思わなくなる」との名言を残しました。もしかすると人間には、ある程度なら、常軌から外れた何かを求める心が必要なのかもしれません。風邪から回復した氏は、また完乗に乗り出したと聞きます。
■ナポレオンパイとイチゴのミルフィーユは、同じものだそうです。近所のケーキ店には、イチゴのミルフィーユとバナナのミルフィーユが売っていますが、イチゴの方をナポレオンパイとは呼んでいません。どっちでもいいのです。ナポレオンパイっていい名前ですが、そういえばミルフィーユだと思い出しました。いずれの名前でもいいから、やせた上でむさぼりたいです。
■大菩薩峠を完読するのに、5年かかったという人の話を聞き、少し安心しました。自分は確か読みだして一年経っていないと思います。こんなに時間がかかるのかと思いましたが、5年かかると聞けば、そうだろうなと思いました。
大人気作品だから止められないと言うと、今のコナンみたいに思えますが。大菩薩峠が28年もかかって完結しなかった理由は、作者の日記みたいなものだからと思うと納得します。周囲がやめさせてくれないというのが理由なら、何度も中断している説明になりません。
大体、大菩薩峠は話の盛り上がりで人を引き付けるものではありません。なんとなしに読んでいるうちに、登場人物達とお馴染みになってしまったような気がして、いつまでも読んでしまうという面があります。昨今、そんなスリルにかけた、そして2時間くらいの映画にも向かなそうな小説はないだろうなと思います。
竜之助は、その後のニヒリズム剣客ものの先陣的キャラだそうですが、竜之助自身は、辻斬りをして、尺八を吹いて、美女に物資的・性的に奉仕され、それにも飽きるとプイとどこかに出てって帰って来ません。
竜之助の日々は非常に腹立たしいものです。しかしある意味、何かのかがみの様な男です。結婚していないのに奉仕してくれる美女が側にいて、働かないのに衣食に事欠かなくて、人を殺しても逮捕されない男。彼の子供である郁太郎はどんな性格の子か書かれていませんが、こんな父に似ないと思います。
大菩薩峠を読んでいると、いわゆる普通の生活を否定するのはとても大変なことだなと思います。
・家を持って定住して ・定職について、上司なり顧客なりに尽くして ・結婚するか、または実父母兄弟を養う
これらの事から逃げ出したい、拘束されたくないともし願ってしまったら、竜之助の様に次々に経済力のある美女に恵まれないと、生きていけないでしょう。まず無理です。作者は、竜之助のように誤った道に走りたかったのかもしれません。
地上に人として生きている限り無理だったでしょう。だから、二次元である大菩薩峠の世界に、住み続けたのかもしれません。せめて筆耕で稼いだお金で、楽に暮らせばよかったのにと思います。谷崎はそうしました。荷風も偏屈な独身主義者でしたが、年金をもらうために、国家に屈しました。 |
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