■ピアノの森について考えていました。
カイが自分の生まれについて、ナチュラルに抗えるようになったのは分かったのですが。巻数が進むにつれ、他の自信満々に見えた男達が、ボロボロになっていく姿を目にします。
カイは立場や経歴上、バカにされやすい立ち位置です。カイを小馬鹿にしていた周囲が、ある意味カイのピアノでメッタ刺しになっていくのがピアノの森です。
カイの演奏の素晴らしさは明らかですが、カイの音楽に切り刻まれていく男達の「みじめさ」「はかなさ」が、印象に残ります。ある意味ラスボスの審査員さん、カイの演奏が母親との思い出とリンクした時の、心の乱れったらなかったでしょう。
カイが斬られる方になったのか。斬る方になったのか。それだけの違いで、ピアノの森のお話は戦場だったと思います。女性や子供は、最初から数多のおっさん達に搾取され、いじめられる立場なので、特にカイのピアノを自分の内面と喧嘩することなく聞けるのだろうと思います。
■自分の最後の砦の一つ、漱石について考えていました。(あとは谷崎とか荷風とか、ある意味大きく言えば砦は一個)
代助って、親の金で贅沢三昧ですが、全く感謝していません。芸者買い、洋書の収集までしているので、かかっている金額は恐ろしく高額です。
帝大在学中はともかく、卒業後も代助は就職・結婚をしていません。徴兵制にもかからないのは、親のコネでしょうか。(多分、親が社長なので兵役を逃れていたと思う)
親とすれば。贅沢三昧なのは多めに見るとして、代助にしか出来ない事をしてくれれば、よかったのでしょう。それが見合い結婚でした。代助は見合い結婚は、人間の自然な姿じゃないとか言い出して、三千代との姦通に走っていますが。
代助の場合。ボンヤリしていて感謝しないんじゃなくて。明らかに父親と兄を非難しています。「もっと金をくれ」的な非難ではなく、彼個人の思想みたいなもので父親たちを攻撃しているので、始末が悪いです。
結局、代助は「自分が金に困っている」男であることを思い知り。職業を探しに家を出ますが。無茶苦茶世話になった父と兄を非難する気持ちは、多分永遠です。それは代助の思想と言えば思想なのですが。「世話してくれた人を憎む、恨む」というのは、往々にしてある事だろうと思います。
「俺の援助を有難く思え」「お前は俺がないとゴミ」とか、明らかにこっちに伝わるように、仕向ける人は一定数いるのでしょう。願わくば、そういう人と縁が切れる様に。Content-Disposition: form-data; name="image"
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