■漱石の行人ではないですが。大体両親が愛するのは、下の子です。私は三人兄弟の一番上なのでよく分かります。母の心に私がいた瞬間はありません。
母は私だけの母ではなく、父の妻であり、弟妹の母であり、祖父母のヨメであり、おばさん達の義妹でありました。おかげで母から余計なプレッシャー等はありませんでしたが、娘らしい気分になった事はこれまた一瞬もありません。
■漱石の行人を読んでいます。こころではないですが、一人称の小説は「うそ」を吐くことがあります。こころも、先生としての真実はあの通りでも、静から見た全て、ましてKからみた全ては全く違う様相だったかもしれません。かといって、三四郎やそれからにフェイクがないとも言えない怖さ。
行人に書かれていない真実
直と二郎は、直が一郎と婚姻中になにか関係があったのかもしれません。みんな一緒に住んでいて、直が不貞を疑われるようなことをしないのは彼女の性格上明らかですが、二郎と一緒に一郎を笑うような場面の説明がつきません。
なぜあんなに直は、二郎にはあけっぴろげなのか。友人関係があったからとも言えそうですが、一郎は弟の残り物をもらったような不愉快さがあっただろうと思います。
行人と言えば一郎の鬱的な妄想、男のヒステリー、神経衰弱がテーマですが、そんな高尚な事より、直と二郎が一緒になってニヤニヤしているような場面の恐ろしさをどうにかしたいです。
お互い、たいして気を使わない家族的な関係だからとも言えそうですが、直の性格を思うと、二郎を特別扱いしているのは確実そうです。行人は項が進むにつれて、DV男の一郎が愛しくなる不思議な小説です。
■漱石の行人を読んでいます。和歌山からみんなが帰って来ました。何故この旅に、直が来たのかよく分かりません。直が大阪に来た意味は?
お祖母さんのお世話かなと思いましたが、そんなに手間のかかるお祖母さんでもなさそうです。なら一郎の世話かと思うと一番自然ですが、そんなにイチャイチャするはずもなく。
最初から一郎と母だけくればいいじゃないと思いました。お貞さんの嫁ぎ先を確認したいのなら、お祖母さんと一郎だけでも十分です。お祖母さん、一郎、二郎だけでも十分話が通じます。
もしかすると
最初に二郎が「みんなで旅行しよう」と言った余波なのか。そこまで二郎に発言権があるとは思えません。
ならば。一郎夫妻に、ベタベタさせるチャンスをお祖母さんがあえて作ろうとしたのかなと思うと泣けてきます。一郎は漱石ではないので、妻をイジメながら妊娠させ、子供ばかり作る様子はありません。
でも、子供ばかり作る一郎だったら、お祖母さんは安心した(はずがない。)子供ばかり生まれる漱石夫妻を、誰が安定した目で見ていたのでしょう。奥さんそれDVだから離婚したほうがいいよ、いいえあたしは精神病患者の夫を捨てるわけにいかない、と不毛な夫妻だった気がします。
(金銭面では鏡子さんの大勝利だったんだろうと思う。まさか漱石が自分のペンネームを商標登録されかけたとは、夢にも思わないだろうけれど、こわい) |
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