■久しぶりに、暗夜行路を読んでいます。前編を読み、今後半です。以下雑感です。
・文章に清潔感がある。花柳界の描写等、エロくないことないし、主人公が「父不在中に、母と祖父の間に出来た子」なので、何かしらの空気はあるけど、母は既に他界している。
時代性もあって、今ならエーと思うような事も、志賀の時代だとフーンで済むのかもしれない。お栄さんとか、しろばんばの世界を思い出した。(洪作を育てたのは、洪作のひいじいさんのお妾さん)
志賀の自伝的小説とも言えるけど、確か志賀には直接の兄はいない。兄的存在は多かったと思うけど。どこまで創作なのか、文章があっさりしていて、こだわるのも何だなと思う。
本当にこだわらない文章で。結構人名も地名も多いけど、一二回でてそのままという事も多い。漱石だと、新聞掲載と言うこともあって、人名・地名には相当気を使っていて、割とカッチリ「舞台」を作る。
そういう「大衆的」な作品を志賀は好まない。じゃあ何を書くのかというと、やや寡作とも言えそう。代助の言う、本当の仕事〜というあれなのかなとさえ思う。
読みやすいけど読みにくい、それが志賀なのかなと。
・志賀はお金持ち
・志賀はお祖母ちゃん子だったことで有名だけど、関連書などを読む限り、幸せそうな大家族で、成人後も幸せそうに思える。
円本ブームとか、「源氏を現代語訳して、良家の子女に売り、一儲け」など、小金・大金を稼ぐことに猛烈だった谷崎とは違うなと思う。
大家族、奥さんともしっかり別れないでいるあたりで、荷風の「金はあるが家族等が乏しく、読んでいて寂しい」感じもない。
志賀、こっちの体調等に関係なく読めるいい作家だと思う。太宰だと、余程体調等のいい時しか読めないと思う。織田作や安吾も、好きだけど結構読んで消耗する作家かも知れない。 |
|