荷風の「腕くらべ」を読み終えました。前半は浮いた内容が多めですが、後半はガクッと泣ける話になっています。ヒロインの駒代が嫌なことを我慢したり、見栄を張ったり、「実意」を周囲に見せようとして張り合うのが前半。それらがまるで実らなくて、周囲から置いてきぼりになって、八方塞がりの中で置屋「尾花屋」を主人から譲られて、お開きになります。
劇中で、「駒代は芸者だが芯からの芸者ではない」「もう少しくだけていないと芸人の妻にはなれない」等、繰り返し書かれています。花柳小説ではありますが、書きたかったのは浮いた話だけではなくて、周囲といつまでも闘わざるを得ない一女性の話だったのかもしれません。
駒代は意地っ張りな訳でも、気の回らない女性でもないんですが。嘆くべきは、駒代の「実意」を受け止められる人間が男女とも少ない事でしょう。恋い慕う瀬川に高価なものを贈ったり、疲れている中会いに行ったりと、駒代は自分に出来る以上の事をしています。駒代が尽くすほどの男だったのかはともかく。
瀬川の駒代を捨てた理由が「駒代は誠実な女性だがもう飽きた。駒代はもう余程お金を使ってしまっていて、借金も重ねている。他にお金のある女性が自分にいる」というのが、えらいもんだと。
芸人である瀬川に近づこうと、駒代が芸事に精を出す場面があるのですが、瀬川のスルー具合が恐ろしいです。荷風なので始終淡泊に書いてますが、逆に忘れられない内容です。
「腕くらべ」を読んだからではないですが、新宿ブラザーズが神楽坂に遊びに行ったら楽しいかなと思いました。「旧町名・牛込を駅名に残された透吾」と、「オフィス街に隠れて十二社の顔を持つ吹」の話、問わず語りします。
透吾が「新宿駅前の隆盛に伴い消えた牛込の名にこだわっている」として、気にしてない可能性の方が高いですが。凛ちゃんから書類か何か預かってきたブラザーズが、神楽坂に来たらどうもてなすか。
ブラザーズに「折角神楽坂に来たのだから」と、和服をすすめる。吹と零二が着付けで席を外している間に、一に振袖を着させる。メイク、髪型も成人式さながらに決める。 透吾にしてみれば、ブラザーズをおちょくっているのだが、吹曰く。「こんなに可愛い着物選んでくれて悪いな、透吾。一にすごく似合ってるよ。俺、和服好きなんだけどなかなか着せてあげられなくてさ。一、可愛いぞ。お兄ちゃんの前で一回回ってみな?最高。よし、このまま神楽坂で一日遊ぶか。」
透吾「俺が悪かったです、西新宿五丁目先輩。一さんには普通の男物の着物今用意させて頂きますんで、そんな格好で俺の駅前を歩かないで下さい。(ブ○コンか女装か、せめてどっちかにして下さい)」
(透吾の出ている漫画は未読なので好き勝手させて頂きました。一は仮に振袖を着せられても案外平気で、何かのイベントと解釈して神楽坂を兄達と歩くと思います。外国人から写真を取られるくらい可愛い姿で。)
平成23年10月19日 竹淵 拝 madeingermany193☆yahoo.co.jp ☆→@ |
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