madeingermany

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...... 2012年03月01日 の日記 ......
■ 白い夜   [ NO. 2012030101-1 ]
「白夜行」を先日読み終えました。感想をいくつか。

■雪穂、美冬?の言葉を、額面通り読んではいけない。いちいち彼女の本音を探ろうとすると、非常に疲れる本。逆に亮司はそっと本音をもらす事がある。典子や他の女性との関係は読んでいて悪くなかった。

■財産の多寡と人間性の如何が正比例していて、読んでいて困る。お金持ちは明日の飯に悩んだりしないけど、亮司の様な立場だと悩み通し。だから何をしてもいいのだとは思わないけれど、東野作品の人物達の貧富の差はひどい。「流星」の戸神家の面々を見ていると、この著者の富裕層へのイメージが分るような気がする。金持ち喧嘩せず。

(功一は戸神の事を調べている時、「仕事が順調だったから殺人は犯さない」と考えていた。功一らしいというか東野作品らしい。)

■貧しい善人は余りいないし、富める悪人があまりいない。財目当ての犯行が多い。クールでドライなのは読みやすいが、その分ロマンス面はおあずけされている印象。

■この著者の女性観がうかがえる。信頼できそうな女性も多いのだが、なんと無しにそういう女性はバックグラウンドに隠れがちで、女性不信なのかと思う時がある。雪穂・美冬は男性に対しては財・名声・地位等を奪い、女性の場合は心を体を痛めつけるっていうのが、ワンパターンなだけに鉄板化していて溜息がでる。

雪穂は幼少時の事件がなければ普通の少女だったのかといえば、そうでもないと思う。亮司は普通の人生を歩んでいたような気がする。「好きな女性と結婚して家庭を作る」夢がうかがい知れるから。そんな亮司を葬ってまで、成功へひた走る雪穂は(略)。

■ひどい境遇の女性が、悪い事をしている男を見つける→男の弱みや罪悪感につけ込み、自分の犯罪のコマにする→(余りにひどい犯罪のオンパレードなので中略)→汚い金で自分の城を築き上げ、裏方を知っているコマの男を事故に見せかけ殺害。

雅也や亮司の様な、罪悪感にさいなまれる、手に職をもった美男子ってそんなに転がっているのか?小説だから仕方ないが、多分雪穂は小さい頃から亮司を片づける気だったと思う。自分の裏方を知っている亮司だし、店の名前をR&Yとしたのも、亮司を誘導していただけの様に思う。

■「幻夜」で雪穂、美冬?の内幕の様なものが書かれるが、雅也にしたような手口で亮司を操っていたのだと思うと、悲しい。両親の不仲その他色々で悩んでいただろう亮司を、幼少の頃から手管にとっていたんだろうと思う。無邪気な少年少女だった時間なんて、雪穂の環境からすれば、一分もなかったと思う。


■心斎橋の店のオープン時、亮司は心から喜んでいたと思う。気分がいい時に披露する、得意の切り紙を配っていたくらいだし。雪穂の「成功」が彼の喜びだったのだはないか。父のした事への終わりのない、彼がする必要のない償いとして。彼の雪穂への愛情もあっただろうが、雪穂からの愛は実質ないに等しい。

小道具だった「RK」の刺繍が入った小物入れも、あれは雪穂の演技だったんだと思う。ボーイフレンドに手作りプレゼントして嬉しがる様な少女じゃない。

・・・洋介を葬った時、雪穂と亮司は洋介をどちらかが押さえつけて、どちらかがハサミの様なもので刺したのだと思う。何回か交代して刺したのかも。

洋介その他の男性の記憶が濃厚にある雪穂が、その息子である亮司に心を開いたとは思えない。亮司から未来も財産も魂も奪い尽くした後、雪穂が彼を事故として葬ったのだと思う。ハサミで突き殺したあたり、雪穂の憂さ晴らしだったとしか思えない。亮司の最期は、雅也の最期を思い出させる。

■雅也の報われなさへのモヤモヤを解消出来るかと思って白夜行を読んだ。モヤモヤは相変わらずスッキリしないが、雪穂ないし美冬と関わった男女は、障害と見なされた時点で同じ運命なのかもしれない。雅也も。


平成24年3月1日 竹淵 拝
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