オースティンの「高慢と偏見」を読んで思いました。ヒロインの母、べネット夫人の夢は、5人の娘を素敵な男性と結婚させる事です。そのために夫人がしている事というと。「どんな男性が周囲にいるのかチェックする」「娘を着飾らせる」「娘と男性をタイミングを見て2人きりにする」等です。当時の女性のおかれている辛い状況も関係していますが、小説の描写はコミカルです。
べネット夫人が誤っているとは思いませんが。劇中で、夫人の娘達を含めて、若い娘達が結婚できないで困っている理由はただ一つ。「持参金が少ない」事です。多額の持参金や遺産が見込めれば、ウィッカムの様な男が進んで娘に近寄ってきます。オースティンの小説なので、そんなもんです。(「ノーサンガー僧院」にヒロインが大金持ちであると誤解を受け、知り合ったばかりの男性から歓待される場面がある。)
外の小説でも、多少付き合いのある娘に対して「あんな金のない相手」と陰で切り捨てるような男性が多いです。また、どんないい男でも金というか経済力がないと困るとオースティンは劇中で何度も書いています(まあその通りだけど)。そしてどんなに魅力的な女性でも、お金に苦労しています。登場人物は全て地主階級の男女、「経済力」というとほとんど領地の面積のようなものなので、相続でくらいでしか増強できない「経済力」ですが。英国が舞台でも「植民地経営で一山当てた男」とかは、オースティンなので出てきません。
べネット夫人が娘達を一刻も早く、階級の釣り合った男性に嫁がせたいのであれば、何故、娘達に多額の持参金を用意してやらなかったのだろうと思いました。べネット氏が、まさか生まれる子供が全て女の子だとは想像もしなかったせいで、収入を全て使うような生活をしてたせいもありますが、彼等もいっぱしの地主階級なら、どうにでも貯蓄できたんじゃないかと思います。
貯蓄せずべネット氏、べネット夫人、5人の娘達が好きに消費していったせいで、階級に相応しい派手な生活は出来たのだろうけど、年頃の男性から見れば「カネがない娘」と見られるようになったのでしょう。劇中でべネット氏がそう言っているので間違いないと思います。
リディアがまだ16歳なのに遊びほうけて、軍人達に盛んに色目を使っていても、結局、捕まえたのは、彼女を愛してもいない自堕落なウィッカムだったのはそのせいです。金離れがやけによく、放蕩な暮らしをしているべネット一家の限界であり、唯一、長女のジェインと次女のエリザベスが「玉の輿」に乗れたから、ギリギリで破綻しなかっただけで。
キャサリン令夫人が、「倹約」を口うるさくいうのにも理由があるのかもしれません。ダーシーの様な大金持ちでも真剣に財産管理をしないと破綻する危険性は大いにあります。周囲との信頼関係の構築も大事ですが、まずは経済かなと。
キャサリン令夫人も大金持ちには違いないですが、ダーシー程ではありません。さぞや彼女の身分の高さ相当出費には悩み抜いているだろうなと思います。令夫人の娘とダーシーが結婚すればまだしも、馬の骨に等しいエリザベスがダーシーを掠め取っていった事実には、怒髪天を突いたでしょう。エリザベスがお金の話をする場面は特にありませんが、ダーシーの「莫大な財産」「使用人や村人に尊敬される姿」「高い身分」等をまじまじ目にする場面はあります。玉の輿。 |
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