黒執事を見ていて。悪魔達に人間が持っているような喜怒哀楽はないそうです。クロードが泣きすがるアロイスに対して一向に憐憫や同情を抱かないこと、ハンナがルカとアロイスに対して「悪魔らしくない」気持ちを持っていることなどへの説明にはなりますが、セバスについてはどうなんでしょう。
「ツンな美青年がツンな美少年に昼夜問わず尽くす」構図を、なんのためらいもなく楽しむには、「これって悪魔が人間の魂を狙っているアニメ」ないし「執事が坊ちゃんに仕えている漫画」という、一定のシリアスさがある前提が大事です。
(西洋美術に昔、裸婦像をむやみに描いてはならないという決まりがあった。でも抜け穴があって、ギリシア神話の女神などの裸なら、いくらでも描いたり見たりしてよかった。ヌードは見たいし描きたいけどダメ、ならばヌードを見たり描いたりしておきながら「これはヌードじゃありません。神様の姿です。」と逃げ道を作ったらしい。なんか分る。
獣肉は食べたいけど、仏教徒なのでアウト。でもウサギは鳥の仲間だから食べていいよね?と逃げ道を作った昔の日本人みたい。)
「青年が少年に尽くす」という様相だけを楽しむのなら、黒執事ではないわけで。なるべくなら、無遠慮にセバスの滅私奉公ぶりを楽しむには、「この悪魔は魂が欲しいだけ」という、固い筋が一本通っていた方がいいです。
クロードとセバスのシエルを奪い合う姿は、単なる「美少年をめぐる美青年対美青年のバトル」でなく、「魂を狙う悪魔」として見たいものです。その方が忌憚ないなと。シエルの血の味や、冷徹な振る舞いに感動するクロードはバカ正直で大好きなんですが、ただの「美少年好きな青年」じゃないんだよと、何回か自分の中で突っ込みを入れました。
セバスなんて2期では飼い殺し決定なので、シエルへの忠誠は愛情の発露ではなく、契約に忠実な悪魔としての美学故ならいいなと思います。(かしずくことでしか表現できない愛ってあるんだろうか?)でもクロードは感情として、自分にすがるアロイスを拒絶したように感じました。感情と言っても「この魂は美味くなさそう」という程度のものですが。
シエルはツンであって初めてシエルで、ツンなシエルだからこそ、セバスを従える事が出来ます。アロイスはもともとシエル程高い身分ではありませんし。彼は愛情の薄い暮らしだったので、精一杯「ツン」を演じてみても辛いでしょう。悪魔としては「ツン」な魂の方が美味しいようですが。
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