パプワの高松についてです。備考として今谷崎の春琴抄についての論文を読んでいます。谷崎というと多くの作品を戦前前後と生み出していますが、多く語られるのはやはり春琴抄なのでしょうか。自分は関西趣味の勝った後期の作品が好みです。
高松についてです。
まず彼について理解していたいのは、彼が通常の人間が一生かかってもなし得ないような仕事をポンポンしてしまう呆れるくらいハイクオリティな「男」である事です。普通の人間は仕事して家事して生活に時間を割けば、大体一生終わります。でも高松の場合、褒めている訳じゃないんですが、あらかじめ人生に余暇が生じてしまう様な男です。普通の人間は余暇が欲しくてならないのに、高松には余っています。普通の人間がソロバンなら、高松はスパコン。
高松は普通の生き方じゃ満足しないだろうなとは、まず思います。幸い郷里香川を後にして、高松以上に性格がぶっ飛んだ天才・ルーザーに出会い充実した時間を送ります。はたから見れば、冷たい男に使役されているかわいそうな子供ですが、高松には「ルーザーを(学問と仕事で?)満足させる」という、到底なし得ない様な目標が出来ました。ルザ様なので無駄に理想が高そう。怒ると手を上げるからすぐ分かるし、機嫌がいい時も分かりやすいと思う。
(※高松は他人に自分を主体的に満足させてくれとは思わないと思う。例えば特定の女性に自分を好きになって欲しいとかは思わないと思う。高松にとって好ましいのは「相手を満足させる自分」であって、うまうまと他人に「満足させられる自分」は好まなそう。なので迂回しているけれど、「ルーザー様のお役に立てる自分」が大好きなのであって、「ルーザー様に私を好きになって欲しい」とは・・・・・ちょっと思う。「貴方にご満足頂けて幸せです」としか言えない関係になっていったのが悲しい。
というか生来的には高松に相手を満足させる喜悦なんかなくて、ルーザー様と出会ってそうなった様な気がしてきた。ルーザー様なので高松に輪をかけてキレているから、相思相愛の喜びに気が付いてひたる前に、「高松に心酔されている自分」を好きになってしまいそう。「僕はお前でなきゃだめなんだ」と気が付いてくれただろうか。)
ルーザー様が亡くなった後、普通の団員として高松が過ごすのかと言うとそうでもなく。グンマを育てます。カッコよく言うと「親代わり」なのですが、自分の子供に「様付け」する親はいません。自分の子供が二十歳過ぎてもまだお守りが必要な状態を、よしとはしません。高松が「グンマ様にかしずく自分」をやめない限り、グンマは高松を頼るでしょうし、マジックも弟の子にそこまで注意しません。
闇丸・グンマ・キンちゃんと並べてみても、この子達の側にはブラックの将軍、マジック、シンタローと、本来高松が従うべき男達がいます。しかし高松の関心は闇丸・グンマ・キンちゃんにあるのであって、「仕事をして報酬をもらう」関係であるマジック達はほとんどどうでもよく、「自分のプライベートな行為を喜んでくれる」子供達にあります。
高松の高松らしい所はそこでして、「子供達」の父親には決してなりません。ルーザー様が既にいるのだから、グンマ・キンちゃんに対しての場合は「自分がママ」とも主張しているようなものですが、そこまで図々しくも・・・隙を観ては主張しています。高松は実子を求める事もなく、グンマやキンちゃんを養子にしようとは思った事もないでしょう。
高松が燃えられるのは、「飽くまで個人的に使役してくれる、自分の内側を害さない程度の立場の差がある子供」なのであって、自分と対等であるところの大人、将軍・マジック・シンタローには興味が薄いです。自分で子供を持とうと思わないのも、「自分の子供」にそこまで芝居がかった忠誠を誓う様な趣味がないからです。
自分の子供を持ち、自分が子供を愛してやまない姿に酔う様な事を高松がしないのは、高松の良心と言うより趣味の方向性でしょう。本当に図々しいと言うか、好んで根無し草になろうとしているような男です。
そういうふらついた高松を変えたのは、キンちゃんかなと勝手に思っています。根拠はないですが、裏表のない子なので、高松から優しくされれば素直に喜んでくれるでしょうし、高松に自分の好き嫌いや気持ちをちゃんと伝えてくれそうだなと。高松を知る大多数の人達、ハレ、サビ、ジャン、グンマ、アラシヤマ達は、「ドクターは変人だから」と思ってそれなりにしているのに。(全然間違いじゃないのが何とも)
子供が親に甘えるような素直な部分でもありますし、かつてルーザー様がそうだった様に、高松に指導的な意味合いで「お前はこうした方がいい」と言ってくれそうだなと。ガンマ団のほぼ全員がドクターに対し、「あれは死ぬまで治らない」と思っている多くの事を、「お前はそうじゃないはずだ」とかキンちゃん言いそうだなあと思いました。無頓着である意味無邪気な部分はパパ似なのでしょう。ルザ様の隠れたいい部分を受け継いだ子だと思います。
生まれて2人目に高松が心を開いたのはキンちゃんだったでしょう。 |
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