自分は小さい頃から図書館の常連です。真面目とか勉強好きなんだねとか言われる事が今でもありますが、あそこ程誘惑の多い場所はありません。児童向けのコーナーに通っていた頃は気が付かなかったですが、いつからか「古典の方が人の欲望が結晶化されているな」と思う様になりました。リアルタイムのテレビやネットだと編集者の観点がなかなか分からない時がありますが、古典だと何千年、何百年の間に何となく読み手の「合意」の様な物があって、あまねく欲望が形になっている割に、迷子にはならない世界です。
国語の教科書に載っている文豪と言われる人達でも、「これはまずいだろ」と思う作品を生み出した事が結構あります。谷崎なんて入れ子細工の様に作品を二重三重にくるみたがりますが、「分かっているな」と思います。複雑な仕様は着物の様に一枚一枚剥いでいいんだというゴーサインに他ならないので。
今読んでいるのは荷風です。デビュー時の谷崎を認めた一人です。荷風の様な孤高の暮らしを谷崎は好まなかったせいか実際の接点はそんなになかったようです。作品の雰囲気も性格の違いからか、重なる様で重ならないです。意外な事に読後感は荷風の方が明るいです。荷風の性格でしょうか。谷崎は晩年積極的に医者を家に呼んだりして養生に努めた人ですが、荷風は晩年に体調を崩しても医者に診せず、最後の日近くまで普段通り生活していたそうです。
谷崎のものはコメディタッチの時もあるし、人物達の生活はほぼ贅沢で、男女の相思相愛をうたう場面も多いのですが、いつもどこか人物達が苦しそうです。
南国終盤雑感です。
■療養中の高松の枕辺で、参考書とか読んでいるキンちゃんが自分の中のデフォです。高松もこんな時と言わんばかりにためこんだ論文の整理とかベッドの上でパソコン広げて始めるんじゃないかと(当時ノートパソコンってあったんだっけ?)。 ■キンちゃんがPAPUWAでリキッドに痛み止めを渡したり、コタローの心配を真面目にしていたりする発端は高松といた病室からだったのかもしれません。お見舞いという頻度と滞在時間じゃないくらい高松の側にいて、時々来る別の医師や看護師の様子を見て、キンちゃんも「お気遣い」を学習していったのかなと。(薬や白衣の匂いって高松の匂いであり、ルザ様の匂いでもあるのでキンちゃんには生来的に居心地のいい匂いかもしれない。)
■そういう平和的な療養でもあり、高松とするとキンちゃんの将来を確固としたものにしたい願いも強かった時期です。(グンマに対しては実父がいるので、もう高松はそんなに強くでなそう。)ハレには「今後キンタロー様は特戦には置かないつもりです」とはっきり言い、マジックには「この高松はいか様な罰もお受けします。キンタロー様だけはどうか一族たる身に相応しいお計らいを」と、彼等が見舞いに来るたびに言ってそうです。
(ハレとマジックが見舞いに来るなら、キンちゃんの将来も高松の身柄も楽観視出来ると思う。本人達が努力家で真面目過ぎるきらいがあるのも十分知っている彼等だし、ルザ様の事を覚えている人達。南国終了直後は本当に平和だった。)
■ハレもマジックも、ルーザーの本当の息子が利発そうなキンタローであり、高松にキンタローが懐いているあたりで展開は読めるでしょうから、高松が怪我をおして懇願しなくても大丈夫だと思います。高松は気が付きたくないのかもしれませんが、ハレとマジックは高松に甘いんです。シンタロー(とグンマ)なら、俺達の従弟にドクターは関係ないと口に出して言い、何かあればそういう態度に出るかも。
■甘くないのはグンマと高松の関係です。高松は今まで「グンマ様をお世話する」事に多大な喜びを表していましたが、突っ込みようのないくらい派手な「お世話」の日々は、自分が「本当のルーザー様の息子」と就かず離れずの関係でいるための目くらましだった可能性が高いんです。そんな意地の悪い考えを南国中盤のグンマ&高松に見出すのは自分も嫌ですが、キンちゃんのためになら自ら真実を告白できるのに、グンマには秘密・秘匿主義を貫こうとしたのは、高松の2人への愛情の性質の違いかもしれません。どちらをより愛しているかは考えなくていい事ですし、もうグンマにはマジックがいるのだと思うと、南国終了後の高松の枕辺で時間を過ごすのは、キンちゃん1人だったろうなと思います。
キンちゃんは起き上がろうとした高松の背中を支えたり、着替えるのを手伝ったり、一緒に部屋で食事をとったりしながら、ゆっくり高松と今後の事を話し合ったんじゃないかなと思います。ハレの特戦も刺激的で魅力的な職場ですが、高松が保持していたルーザーの残していった管理システムがガンマ団にはあるのでしょうから、キンちゃんに管理部に入ってもらって、亡父の仕事を継いだり、時々は高松の医務室を手伝ったりして欲しいです。そして何より大事なのは従兄弟達と仲良くする事だと高松は伝えたでしょう。
そう思うと、シンタローともグンマとも上手くいかない高松の退陣の日も自ずと近かったのだと思います。その後はキンちゃんが高松の下に通うといいなと。 |
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