荷風を読んでいます。谷崎を山程読んだ後なので、さっぱりした短めの文章が心地いいです。荷風の小説は、学生の頃は時代がかった空想の世界の事の様に読んでいましたが、よく考えるともう読み返せない様な内容のものもありました。その割に内容を忘れないのは、書かれている客観的な内容よりも荷風の味故なのでしょう。自分は女性ですが、男に生まれて荷風の様な生き方をしたいと繰り返し思ったものです。あくまでイメージの話なので、頑として医者にかからないとかは真似出来ませんが。
「鍵」を読んだ後谷崎について考えました。元々関東ものらしいきびきびした文書が書ける人だったと思うのですが、何故関西語を好んで使うようになり、晩年には人物達の語りや日記を多用する様になったのでしょう。小説において絶対的な力を持つ「地の文」の影響力を弱め、徹頭徹尾人物達の生々しい声を形にする事には成功したと思いますが、かえって何が本当は劇中で起きていたのか不明瞭になっていった様な気がします。
「卍」の園子の弁がでたらめだったかもしれないとは思わないんです。多少はこうであって欲しかった気持ちとか交えていたと思いますが、園子の弁に谷崎の口吻を感じる時以外はいたって彼女の弁だったと思います。「鍵」の日記はそれぞれに読み手がいるので、書き手が読み手に訴えたい事がある以上、誇張したり隠匿したりはやむを得ないです。
困るのは「瘋癲老人日記」でタイトル通り全編老人の日記です。読み手が特にいない分、颯子とのあれこれは彼の妄想じゃないかと思いました。今でも「ブログ上では別人」という事はあり得ますし、そんな日記なら体を押してでも書きたいでしょう。颯子がどんな女性であったとしてもあれはない、彼の妄想かなと思いました。谷崎の小説の人物達はほぼ有閑の金持ちですが、最後に来てえらい傑物を置いて行ったと思いました。
以下は独断と偏見しかない南国&PAPUWA雑感です。
■南国&PAPUWAでも部分的に少年漫画の様な「頑張る」場面があります。シンタローとサビ、コタローとサビの修行の場面や、総帥着任後のシンタロー&伊達衆など。ティラミス&チョコレートロマンス達の実務班の当たり前の大人としての「頑張り」具合は好ましいです。突っ込み所は下記のとおりです。
「サビは現役を引退している様な立場として描かれているが、実際はデビュー戦で恋人を失って以降、遺産ありきのニートになった。いい大人が懐手して立場の弱い甥達にあれこれ命令している様にも見えなくもない」 「シンタローは組織のトップになったはず。団員時代を忘れない活動ぶりは結構だか、何でも一人で背負い込むなんてマジックじゃあるまいしにまだ無理。一匹狼めいた暴れん坊に見えたキンちゃんは某古株団員の指導のせいか管理職としての仕事に目覚めたけど、シンタローの場合キャラ的に仕事?する場面が未だに似合わない」
■古株の団員、ドクター高松に対し「もう一人で何でも出来る」と(グンマに)啖呵を切らされて、結局グンマのお守りの役が高松から自分に移っただけだった事に気が付いた南国後のキンちゃん。でも去っていく高松から言外に「自立心を大事になさって下さい」とかも言われているのでひとまず高松不在でも頑張ってみる事に。
その後自分でそれらしい口実を見つけて高松に会いに行き、何事もなかった様に本部に従兄達の所に帰って来るが、キンタロー様ったら特徴的な眉毛が小綺麗に整えられているわ、伸びかかっていた髪は亡父と同じ長さになってるわ、暑かったのか服は新調されているわ、表情は生き返った様だわで、笑いを我慢するのが辛い程、ドクターにいじくり倒されたのがバレバレ。でも頻回に会っている様なので、キンタロー様は嫌じゃないらしい。
■マジック総帥を書くのが好き過ぎて怖いです。組織のトップって二次元的に無条件に好きなので、マジック現役時代を舞台に好き勝手に二次創作しそうです。マジックの好きな所はシンタローに一途な所です。南国&PAPUWAのキャラ達の好きな所って「一途な所」が多いのですが、マジックは高松に並んでそういう部分が目立つ男なので好きです。
高松はマジックを恨んでいたという事になっていますが、あのマジックが高松に思うさま自分を恨ませてあげていたのかなと思うと、なんかこう高松は一人じゃなかったなと思います。「ルーザー様の遺児を育てる」とかまだ子供同然の高松が言い出した時に、一番反応したのはマジックじゃないかと思います。ハレ、サビを面倒見たというマジックなので、意外とグンマごと高松を面倒みるつもりはあったんじゃないかなと思います。人の子だと思ってバカバカ言ってくれますが。
なので、サビだの高松だのが悔し紛れに嬰児交換という恐れ多い事をしでかしても、マジックから見ればグンマもシンタローもサビも高松も同じ様に子供も同然なので、シンタローを溺愛している今となっては、大した打撃にはならなかったのでしょう。キンちゃんの登場についても、連れて来た高松の様子を見ていればその子のお父さんの顔も浮かび、徐々にですが自然と受け入れていたのでは。
残念なのはシンタローで、ブラコンブラコン言われるのは何でもないのですが、コタローに似ているタイプの美少年にならすぐ反応するのが残念だなあと。それだけコタローへの気持ちが強い事の表れかもしれませんが、シンタローはコタローが好きなのではなく、「我儘な美少年」が好きなだけなのかもしれないと思うと実に残念です。 |
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