■今日も雪です。しんしんと降るなんてものではなく、日本海や新潟を越えて強い風が吹くので、降雪より風の強さの方が目立ちます。去年ほどの大雪ではない様です。
■高松はイライラしがちな男だと思いますが、なだめる方法もなくないはないと思います。
・彼を立場が上の者の前に連れ出す。例えばマジックには直接的な怒りは見せられないから。 ・怒りの元から彼を遠ざける。南国後の隠居が好例。 ・グンマを呼び寄せる。一時はてき面に効いたけど、グンマが高松嫌いになってからはどうなんだろう。
・キンちゃんに、釜揚げうどんを食べたいから付き合ってほしいと誘ってもらう。皆の迷惑だからうどんでも食べて機嫌直して仕事しろと言うと、機嫌なんて悪くありません、と言い張ると思うで、あくまで「俺がうどんを食べたいから」と言う。「キンタロー様の御要望なら」と腰を上げる事疑いなく、稲荷寿司まで食べる頃には普段の彼に戻っていると思う。
男のプライドが高くて面倒くさい所と、女性の現金さを兼ね備えた科学者・高松。
■漱石雑感です。
漱石と言えば明暗まで、姦通ありきの作品を多く書いています。どちらかと言えば、漱石のアバターではないと言われる津田も、昔の恋人だった清子を追っかけて温泉場に乗り込みます。そんな津田の人が変わった様に積極的な浮気心を知れば、延子はもっと苦しむでしょう。
津田は、延子との結婚は身内や吉川夫人の言いなりになった結果であって、自分に帰すものではないと思っています。延子を幸せにする気持ちも、義務心もなさそうです。延子がいれば岡本や吉川から同情と援助が期待できるから、延子と結婚したまでです。
津田の本当の心は未だに清子にあり、清子は陰謀で関と結婚したと信じている様です。なので堂々と清子への浮気を推し進めます。常識的に考えて、既婚者の清子が津田を避けるのは当然なのに、清子を無我夢中で追っかける津田の子供っぽい所が何とも。
何故、こうまで姦通を奨励するかのような作品が続くのかと言うと。「こんな女と自分は結婚したくなかった」「あの女と自分は結婚したかった」「周囲がうるさいから、間違えてあの女は俺じゃない男と結婚した」という、漱石の恨み節が明暗まで続いているからかなと思います。
作家と作品を重ねてしまうと間違いのもとになりますが、漱石の不満・イライラを小宮達が目にすれば、漱石のねじまがった性格故だとは思えず、現行の細君である鏡子さんを責める気持ちになるかもしれません。
■猫でも漱石は結婚は人をダメにすると言っていた気がする。しかし猫の最終回は寒月君の結婚の報告で終わる。猫の細君は、先生が結婚云々を力説しているのを聞いていて、嫌な顔をしていたと思う。比較的明るい印象の猫でこれだった。
同時期の草枕のヒロインの那美さんは既婚者。派手な着物を着て画工を誘惑したり、すっ裸で画工の入っている風呂に入って来たり、普通にお茶を出したりと忙しいヒロイン。那美さんが出戻りだと聞いた画工は、自分と那美さんの恋バナを妄想するも、この旅が非人情の旅であるからと辞退する。
猫も草枕も、あっさりした初期の漱石の読み物と思いきや、ここまでこじれていたとは思わなかった。漱石はそういう作家だからと言えばそうなのだけど、ヒロインは可愛い独身令嬢不可、幸せな既婚者不可、夫との仲がこじれて、昔の男である自分を内心頼ってくるような不幸な女性がいい(三千代)という漱石の願望が恐ろしい。
そういう、姦通ありきの小説の方が世間に受け、小説家として金になると踏んだのだろうか。漱石は虞美人草の頃から売れっ子だったらしいので、こじれた恋愛模様が読者に受けると知っていたとは思う。 |
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