■今まで一番楽しかったのは、大学構内の庭先で弁当売りのバイトをしていた時かもしれません。4回生の春の事でしたが、1回生の頃から生協の一日バイトを繰り返していたので、最後の校内バイトだったのでしょう。
期間限定バイトでしたが、周囲が会社訪問に精を出す中、何故かエプロンをして弁当を並べていた非日常ぶりが好きでした。あんな時間もうないとしても、やはり働いている時が幸せなんだと思います。
束の間のバイト後、卒論作成と就職活動本格化と、両方がはかどらないストレスに見舞われたのは秘密です。大学に居残れないかなと画策しましたが、弁当売りのバイトならいざ知らす、本当の職員は一定以上の質が求められることを知り、グンマに帰りました。
■また荷風を読んでいます。近所の図書館に、墨東奇譚とすみだ川を収録したハードカバーがあるので、よく読んでいます。よく読むと思いきや、貸出履歴を見たら自分は2年程読んでいませんでした。つい最近まで断腸亭日乗を読んでいたせいで、そう思ったのでしょうか。
年をとったせいか、数年前の事をつい昨日の様に思いだします。実際はそんな事なく、ちゃんと数年分の事件が起きているはずです。都合のいい頭になったと言うか、情けない頭になった気がします。
■高グンを思うに、テーマは罪でしょうか。無論、罪はグンマに非ず高松ですが。
アメリカ文学だと罪をテーマにした小説がいくつかあった気がします。秘文字、ちょっと違いますが風と共に去りぬもスカーレットがいつも非難されていました。罪を恐れず奔放に生きるヒロイン、と言うとかっこいいですが、緋文字のヘスターは罪から逃げない生き方がかっこよく、スカーレットの場合は罪を犯している自覚もなかったんじゃないかなと思います。
高松の場合悪い事するのが仕事と言うか。人生を切り開こうとして悪い事する訳でもなく、彼の一番幸せな時期は正しく風と共に去ったので、43歳でキンちゃんに出会って、初恋の様なトキメキを今更覚えればいいと思います。
高松のガンマ団の一人として重ねてきた悪行については、責任は雇用主のマジックにあるとして、高松は不問じゃないかなと思います。高松に甘いサークルです。
普通の人なら、周囲から嫌な目で見られるとか、お金や地位、時間を払う事が罪のつぐないだと思うのですが。高松の場合、他人からの愛情や好意、地位、財産等について執着が無さそうです。高松最大の財産はルーザー様との思い出と、自身の頭脳なのであまり即物的な執心はなさそうです。
グンマに嫌われれば、高松の罪も軽くなるのかと思いきや。元来グンマの親権は父母がいないので、正しくはルーザー様にあった親権を死後マジックが後見人として受け継ぎ、高松はその手伝いと言う感じだったのでと思います。ルーザー様が兄を差し置いて、高松を自分の息子の親代わりに指定するとは思えないので。
何というか高松は、黙っててもこれくらいして当然なくらいの便利屋と言うか。グンマについての責任や権限はマジックにあって、やっぱり他人なのかなと思います。高松もそれは承知で、グンマとは他人でいたいのかも。
グンマに好かれても一時的なものだろうし、グンマが大人になれば高松の事なんて忘れるでしょうから、嬰児交換がばれたのはかえって高松には事態の好転だったのかなと思います。嘘をつくのは疲れますから。
キンちゃんに対しても、高松のスタンスは同じだと思います。ただしキンちゃんの場合、彼が優しすぎると言うか、グンマ程世間を知らないので、まだ高松の事が好きそうです。幸い、親権が問題になる年齢ではないので、大人同士というか、好き合う同士でキン高はゆっくり考えていけばいいのかなと思います。 |
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