■ルーザー様について。高松なので、恐らく出会い始めは、有能な人の下につけて自分は幸運だったと思ったでしょう。野心を抱えて四国から暗殺者集団に参加したのなら、野心を満たす意味でラッキーだったと言えそうです。
高松はルーザー様のお人柄や仕事のやり方で、相当鍛えられた後、やっと彼の美貌や素晴らしい声、身についた上品さや、気高いと言っていい考え方に頭が及んだのかもしれません。最初からルーザー様の美貌・美声に頼って彼を好きになった場合、後々辛くなりそうというか、ルーザー様の本懐はやはり仕事だろうから、ハンサムさはオプションかもしれません。
ルーザー様も同じで、まずは高松に勉学と仕事を叩き込んだ後、ゆっくり彼の可愛さや素直さ、植物を愛でる時の繊細さや、意外と寂しがりですねやすい所を知るのかもしれません。お互い相手に求めるものが大きくて、素顔を見せるまでが長そうです。キンちゃんが登場した後は、更に違う顔を見せる高松。
■なんで私鉄はあんなに飛ばすのだろうと思いました。もちろん各駅停車のロマンスカーやスペーシアはないと思いますし、気を付ければロマンスカーに乗っていても、駅や線路にある普通の電車が見られます。そんな電車達も競走馬の様に軽くて速そうです。
初めて関西に行って阪急に乗った時に、何故こうも電車に種類があるのだと思いました。阪急京都線の速さの秘密というか、小さい駅に止まらない事で利便性を上げているのは分かります。地下鉄は各駅停車の事が多いので、関西でも関東でも同じように乗れました。
JRでもそういえば都心に近付くと急行があるので、飛ばすのは私鉄だけではなかったです。なにせ普段、各停のわびしい電車だけで過ごしているので私が驚いただけでした。なんとなしに私鉄の個性的な車両は慣れなくて、おっとりと走る鋼鉄車の方が自分は乗りやすいです。
■細雪で好きなのは、中巻かもしれません。下巻の、義兄の姉の言葉で見合いをした、大垣や蒲郡での団欒のひと時も好きですが、下巻は谷崎の趣味なのか時勢的な事なのか、ひしひしと暗い影を感じます。
ちなみに恐らく上巻が、一番スタンダートな細雪の世界でしょう。当初は活発な妙子と、大人しい雪子と言う単純な構図だったのでは。上中下巻と雪子の見合いに精を出してくれた井谷は下巻で渡米との事なので、この一家を今後崇拝してくれる人はどれくらいいるのでしょう。
優雅で、人もうらやむ四姉妹でありながら、世間はそうは思っていない、妙子の悪女ぶりは奥畑の関係者を通して関西中に知れ渡っているとか、雪子の見合いにせよ、斜陽でありながら見合い相手に高慢に振る舞い、恨みを買っているらしいので、貞之助の主観は一家に擁護的であっても、どうなんでしょう。卍で頻発したトラブルについて、園子は他人事の様にしていましたが。
中巻は妙子の冒険譚でほぼ終わっています。妙子の物語も寂しく、辛く、収拾がないですが、彼女の生活意欲が好きです。妙子の渡仏計画、井谷の渡米、シュトルツ一家、カタリナの家族と谷崎っぽい西洋好みのあふれた巻です。
細雪というと雪子をヒロインとした日本美の集大成的な作品とされていますが。幸子が自分は近代的な方だと自認していたり、蓼食う虫の様な淡い西洋賛美が細雪にあるので、和風美女の展覧会というだけの作品ではなさそうです。
妙子の数々の敗北と失敗と汚名の半生は、谷崎の何かを表しているのかなと思います。細雪は普通に作品として面白いのでそう思うだけですが。美味しいもの楽しむ妙子、贅沢な衣類を求める妙子は谷崎的である様に見えます。 |
|