■ルザ高と言えば身分差かと、昨日思いました。上司部下、先輩後輩というライトなものでなくて、上官と部下という生死に関わるものかもしれません。エマみたいな可愛くあったかい雰囲気は微塵もなく、むしろ「女の一生」のジャンヌの周囲を思い出します。
欧米映画なら、上役の軍人と、美人補佐官とのメロドラマが普通にありますが、メロもドラマもなさそうなルーザー様。というかルーザー様自身も、幼少期から生きる死ぬの話で包囲されているので、余計なワクワクなどなく育っていそうです。結果、兄第一主義になり、亡くなるのですが。
何となく、本当に若かった頃の高松は全くの野心家で、欲しいものは力だけだった、とかを妄想しています。普通に幸せになりたいのなら、ガンマ団にはこないでしょう。もしガンマ団の門をやむを得ずくぐったとしても、普通の幸せから最も遠い所に来たと知ったと思います。人の幸せを破壊して回る団体ですから。
ちなみに身分差婚とは、我々が思う様なシンデレラストーリーではなく、身分の高い方が地位や財産を捨てるものだそうです。小公子のセドリックの父がそうでした。源氏物語中のシンデレラの多くは身分の低い女性ではなく、生活が苦しいだけで生まれは皇室か権勢家の家に連なる事が多いです。かばってくれる男性さえいれば、いつでも日の当たる所に行ける人達です。
そういうとルザ高も、一種の形を貫くなら、セドリックのお父さんの様に英国での地位や財産を捨てて、貧しくともアメリカで新生活を送らないとなりません。もちろんそんな事は無く、ルーザー様の頭から兄さんを切り離す事は出来ないでしょう。
高松もそこは分かっているので、ルーザー様とキンちゃんと、どれだけ仲睦まじくとも越えない一線がありそうです。ルーザー様は自分の身分の高さ、影響力の大きさを知らないまま亡くなった気がします。キンちゃんは、高松から自分の立場について繰り返し聞いているだろうから、多少は父と違うでしょうか。
丁度細雪を読んでいるので、身分差についての描写はこちらにもあります。蒔岡家というのがどれほどすごい家だったのかは分かりませんが、最終的に京都の公家の血を引く男性と雪子が結婚したあたりで、普通の家だとは、少なくとも家内の人は思っていません。
普通の男性である橋寺が、雪子のよそよそしい態度に激怒するのも無理ありません。御牧は何故雪子のモジモジした様子に反感を持たないのかというと、例えば光代の様な「官女」的な娘が御牧の思う代表的な身近の女性であって、後は「奥様」「おひい様」が御牧の知る女性でしょう。雪子は「おひい様」です。
彼自身も父の側室の子だそうで、側室というものが堂々とあった頃の事、そういう女性の存在が非難されないあたりで、御牧の立ち位置がどれくらい特別なのか分かります。 |
|