■ミスマープルものを最近読み直したきっかけは、起承転結のハッキリしたものを読みたいと言う気持ちだったと思います。あと、穏やかな英国のアフタヌーンの雰囲気など読めば、何故か英国籍らしいルーザー様の日常を想像出来るんじゃないかという、クリスティを冒涜するに近い欲求でした。
(企業戦士のルーザー様にアフタヌーンは余りなさそうだし、ミスマープルと多くの登場人物は労働と疎遠そうなので、自分の誤りを認める。ルーザー様に高松の内助の功が効くのかは不明だけども、キンちゃんのために早目に家に帰るルーザー様とか見たい。)
穏やかなお茶の場面もミスマープルものになくはないですが。三時の話題が殺人事件だったり、又は数時間後に誰か亡くなっているのであまり穏やかでもありません。ミスマープルの辛辣さ、孤高、ネメシスたる態度も、安易な馴れ合いを拒んでいる気がします。
シードケーキと言う、英国の伝統のお菓子が何回か作品に出て来ました。作るのが大変なので近年は本物が出回らないとか。美味しそうにシードケーキを頬張る御婦人もあれば、シードケーキといえども、苦手な人がいるのだからと、さりげなく警鐘の例えにされたりしていました。
逆に読むと。あのシードケーキだからと言って、自分も隣人と同じように美味しそうに食べたり、欲しがったり、崇めたりしなくていいのだという事でしょうか。その考え方に出会うために、作品群に触れて来たかもしれないとちょっと思いました。
■ミスマープルものの、鏡は横にひび割れてを読んでいます。作品群の感想などネットで読んでいたら、この作品の犯人や動機を知ってしまいました。まだ序盤なので、マリーナ・グレッグは被害者の死のショックで寝込んでいます。
普通なら、大女優のマリーナにまつわるトラブルかと思うので、最後のどんでん返しでプライバシーの話だったんだと思うのだろうと思います。そういう神聖な場所に踏み込めるのは、怖そうな警察の人でも、家族でもなく、見知らぬ老嬢一人なのかなと思うとドラマチックです。ルーザー様の死後の高松の行動も、クリスティに描写してほしいのですがどうでしょう。
意外とクリスティのもので、恋愛によるトラブルは少ない気がします。ありがちなのは、お金のために義理の家族を殺すとかでしょうか。後は夫婦間での殺人とか。高松の場合、仕事で殺人、傷害に近い事はやらかすとしても、プライベートをこじらせての殺傷事件はないと思います。
高松が殺しても死なない相手を恨んだせいでしょう。又は、死ぬとか殺されるとかに、ドラマチックな感情を抱いてしまう上に、死ぬまでに使い切れない程の財産と、高い地位を保有した男を、たかが庶民の高松が脅しても効き目がありません。
キンちゃんのために高松が犯した事と言うのは、マジックからグンマを取り上げる事でした。グンマを殺した訳はないのでセーフなんて事は無く、高松は罪悪感に襲われています。ジャンが悪い、サービスが悪い、マジックも息子と幸せに暮らすなんてさせないと思っても、スッキリ出来ないわけで。
高松の願う罪をつぐなう方法が、キンちゃんにすべてを話してから彼に殺してもらう事だと言うのが、グンマの心の傷を更にえぐったと思います。高松が真に愛するのは長年一緒にいた自分ではなく、何だかよく分からないキンタローなのだと知った時、グンマはどうしたんでしょうか。 |
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