madeingermany

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...... 2015年12月18日 の日記 ......
■ 狂気   [ NO. 2015121801-1 ]
■キンちゃんがどんな恋をするのか分かりませんが、人生のモデルとも言うべき、高松に似た恋なのだろうなと思います。高松がキンちゃんのお世話係を申し出ても、キンちゃんが高松に自分を似せる必要はないんですが、キンちゃんの「居心地の良さ」を作れるのが高松なら、やはり似てくるんだろうなと思います。

やたら多忙で強情な生き方は、高松がルーザー様からもらったもので、キンちゃんも知らないうちに、そんな生き方を選ぶのだろうと思います。だから、高松との?日々のちょっとした休息が嬉しくなるのかも。



■しばらく前から、セルバンテスのドン・キホーテを読んでいます。オースティンの恋愛小説の様に、「金持ちで優しく、プロポーズなんてしてくれる年上のイケメン」とか出てこないので、しんみり読んでいます。

ドン・キホーテと言えば、ハムレット的性格と対象とされる明朗快活なイメージですが、物語が進めば進むほどドン・キホーテの狂気が薄らぎ、薄暮の様な切なさが漂います。今読んでいるのが最終巻である、後編の三冊目なので、物語はもう日暮れの如きです。

同じ古典でも、源氏ならどんな物悲しい終わり方でもこんな思いしないだろうなと思います。源氏が破廉恥だから。

ドン・キホーテも「遍歴の騎士は美しい姫君や、可愛い侍女達に常にモテモテ」「ちょっとした冒険をすれば、億万長者になれる」とか、ドラゴンボールの悪役みたいな事を考えているんですが、基本的にいい人です。



■本って、出会う時に出会うんだなと思います。最近新しい本に挑戦していなくて、好きなものだけ読んでいるけど、それでも「出会い」を感じます。

ドクター高松について考察しながら読んでいたのは、主に谷崎でした。お艶殺しから瘋癲老人日記あたりまで一気に読んで、どれも面白かったです。高松を書く時に参考になりそうなのは、春琴抄の佐助と痴人の愛の譲治だろうと思いました。でもキンちゃんの「恋」に狡知な部分が少ないので、高松としても異常さが余りでない恋になるのだろうと思います。なにせ一応親代わりだし。



ルーザー様はドン・キホーテなのかもしれません。高松はサンチョ・パンサ。兄弟愛という、雲の様なものを信じて荒野に出たルーザー様は、自分の狂信に気が付いたのかどうか定かではありません。高松は、ひどいブラコンをわずらうルーザー様を最初は内心小馬鹿にしたり、自分の出世のために利用しようと思ったかもしれませんが、狂気ってそれ自体で魅力を放ちます。

サンチョは公爵から嘲弄の意味で与えられた島を、自分の遺志で離れます。ドレの挿絵の、苦痛と恐怖と不安で涙し、ロバの顔に自分の顔を擦り付ける彼の姿を見ると、ドン・キホーテの長い旅の終わりを感じます。

ルーザー様の狂気の旅は自死で終わります。冷たい兄や、痴情にまみれたサビを恨まないで、ただ退場していったルーザー様は気高きドン・キホーテの様です。サンチョの高松はご主人の退場に泣くしか出来ません。サンチョには妻も娘も帰るべき家もありますが、高松の帰る家はルーザー様の狂気の中にしかありません。

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