■高松とグンマと言えば、お菓子ですが。サービスはレジャーシートの上にお菓子を山盛りにしているグンマに呆れ顔でも、当人達はどんな思いで菓子を口にしただろうと思います。
高松もグンマも大食漢、グルメという風には見えません。高松なんて多分士官学校で栄養指導もしていたと思うので、明らかに健康的でないレジャーシートに満載のお菓子なんて、大切で大好きな人に勧めないと思うのです。漫画的表現なんだと思いますが。
2人が欲しかったのは、お菓子というものが醸し出す、幸せな人々のイメージだったのかもしれません。ホットケーキやアイスクリームを作ってくれる幸せそうな母親と、その子供のイメージ。高松の秘密を知った後でもグンマは菓子を食べ続けるので、全ては竹淵のひどい憶測に過ぎないでしょう。
■必要以外の食物を口にする時は、味やカロリーを求めているのではなく、イメージを求めているのかなと思います。そう思うと群馬のスイーツはまさに現実において小腹がすいた時のためとうか、味噌饅頭はほとんど食事ですし、お焼きも甘味というより軽食です。
コンニャクゼリーも美味しいですが、食べて痩せるという両極端な欲望を具現化し、まさしくイメージを形にした食べ物に思えます。
谷崎の初期の小説に美食倶楽部と言うのがあり、美食家達が最後にたどり着いたものは、味と食感のみ楽しむ、白菜の煮物だったと思います。
■読むダイエットとして、アイスクリームの本を読んでいました。タイトルはそのまま「アイスクリームの歴史」です。
日本でも平安貴族が氷を食べたり、氷で遊んだりしている描写があるので、東西で氷菓への熱い欲求があったそうです。その後日本でアイスがブームになったのは、自分が過去読んだ本だと、漱石の頃です。
漱石の少し前。落語の主な舞台である江戸時代では、アイスや氷菓子の話は少ないようです。お菓子と言えば羊羹、饅頭という庶民的な和菓子が主役だったのでしょうか。落語が対象とするのは、博打や吉原通いが普通に出来る層であるなら、煙草や酒の描写はあっても、飴や煎餅の描写は勢い少なそうです。
漱石が大食漢だったのか、文学者というのは飲食からしてインスピレーションが大事なのか、漱石の小説の人物達はよく食べます。
坊ちゃん ・冒頭から仕舞まで何かしら食い続ける坊ちゃん
虞美人草 ・将来の夢を描く小野さんの心には、氷とイチゴが浮かんでいる。 ・嵐山で桜を見ながら、ヨモギの団子ばかり食べる小野さん ・浅井が縁談の話のために先生の家に行った際、小夜子がビスケットを皿に盛っている。男性にビスケットを出すのかと不思議だけど、当時は高級な方の菓子だったのか。
猫のジャム、砂糖、ビール 草枕の干菓子、羊羹 三四郎の桃、カレーライス、精養軒の食事 それからのウナギ 道草のノリ巻き、牛乳 行人の炭酸水、鯛の焙烙蒸し、アイスクリーム 明暗の洋食、劇場での一服、リンゴ
漱石は胃弱で大病を繰り返した人のはずですが、実に小説中もグルメです。 |
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