madeingermany

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...... 2016年05月12日 の日記 ......
■ 雪子の下痢   [ NO. 2016051201-1 ]

■小学生くらいから学生時代ずっと、大人になったら文豪みたいな事をしようと決めていました。一か月温泉宿に逗留し、執筆とか。一か月逗留は流石に無理ですが、三日間でもいい、執筆は大変そうだから、逗留ってのだけしたい、と願って結構になります。

文豪の逗留って、昔は転地療養や民間での湯治が盛んだったのと、彼等にはスポンサーがいただろうことがあったのかと思います。群馬県内にも文豪ゆかりの宿がいくつかありますので、たまに利用させてもらって文豪気分になって来ます。




■数年前南国を読み返した時、念頭にあったのは高グンでした。カップリングと言う程確固としたイメージではなくて、貴族的な青年とお世話係と言う竹淵の好みのコンビだったからです。

その後、グンマが果たして高松を許せるのだろうかと言う問いに始まり、高松の中にはグンマというものの前に、ルーザー様がいて、生まれたキンちゃんがいたのだという考えが沸きました。

高松がグンマに害意を持っていた事は一度もないと思います。憎いマジックの息子だからいじめてやろうとは夢にも思わなかったと思います。

ただ、自分と一緒にいてもグンマは幸せにはなれないだろうなという予感はあったろうと思います。好き嫌いの話ではなくて、ライオンの子はいつかライオンの群れに返さねばならないので。



■細雪を図書館に返して数日です。普通の新書本なら一日で読んでしまうので、あんなに厚い本と過ごす時間は貴重です。以下は雪子の下痢についてです。この日誌を、何か召し上がりながらご覧になっている方がおられたらすみません。



・雪子の下痢。妙子の下痢については赤痢の時に延々語られているけれど、雪子の体調不良の描写は実に珍しい。細雪で体を壊す人物と言えば、筆頭は幸子で次が悦子だと思う。

幸子の体調不良は、ビフテキを食べたとかで起こる贅沢病とも言える。お嬢様育ちの証明の様な臥せ方。悦子も幸子と同じで、雪子と言う母より看護が上手い叔母に愛されている証明の如き発病が多い。2人とも、貞之助という夫であり父である、頼もしい男性がいる。



・鶴子と雪子は割に丈夫で、東京に引っ越しても何とか耐え忍んでいる描写がある。鶴子は本家、姉妹の長女の強さであり、雪子も零落の一途の蒔岡家のシンボルとして、内面の強さを常に体現してきた。

丈夫な鶴子、雪子。臥せがちな幸子と悦子と言う対比が面白い。ならば妙子はと言うと、水害、赤痢、奥畑から淋病を移されているかもしれない事、死産、と体調不良について事欠かない。生活スタイルも不規則で、人形製作や洋裁で夜更かしする事も多い。



・でも細雪の締めくくりは雪子の下痢だったりする。

谷崎の病気恐怖症、貧乏を恐れる事、とにかく不安を抱えて生きていた人だった事を思うと、細雪の基盤であった雪子の清さ・強さの崩壊は、谷崎の恐怖の体現だったのかもしれない。

美しく裕福な幸子一家を描きながら、片方では生活苦を感じている鶴子達を描き、生真面目な雪子と奔放な妙子も対比になっていた。細雪のクライシス来たれりと言うか、この先の幸子一家、鶴子達の暗転が想像される。

あと。雪子というヒロインを、御牧にあげてしまう谷崎の報復でもあったのかもしれない。谷崎は自分の書いた男性キャラを好かない傾向があったと思うので、愛情込めて書き続けた雪子嬢の婚礼に嫉妬し、祝ってやりたくなくなったのかもしれない。

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