■高松は、ルーザー様が兄弟のためなら文字通り死ねるお人である事を理解した上で恋しているのだと思います。その感情が恋愛である以上、自分があんまりルーザー様にとって重要でない、影響力なんてない、道具とそんなに変わらないと思うのは実に苦しい事で。
かといってルーザー様の宝物であるハレ、サビに当たり散らすのは何の発散にもならない上に恥ずべき行為で、おまけにルーザー様が不快がると思われます。
この辺で恋愛なんか止めたい、と高松がいささか自分を取り戻しかけた頃、キンちゃんの出生がほとんど確定されるんだろうなと思います。小さい恋人の誕生と言うか、世の中に本当の意味で高松が必要な男の子の出現と言うか。
完全にルーザー様への執心を放擲したかの様に、キンちゃんに全力な高松を見て、恋に苦しんでいた彼を、もう少しかまってやっておけばよかったとルーザー様は思うのでしょうか。
■当たり前ですが、鉄道の乗車券は同じ駅間なら、上りでも下りでも同額です。高崎から前橋は安く、前橋から高崎は高いなんて事はありません。
人の心はそうじゃないのだと今更不思議に思います。複数の人間、人間の心があって、二点を結んだ場合の距離は双方で異なる事があります。甲はベッタリと相手を慕い、乙には何の事か分からない、そんな事はよくあるだろうと思います。
アラシヤマはシンタローに害意を抱く程、シンタローからの友情を求めているなら。シンタローには大事なものが沢山あって、一番がコタ、マジック達親族なのかなと思いめぐらす事もあるんでしょうか。
アラシヤマにはシンタローに振り返ってもらう事が生涯の夢でも、シンタローには実にそれが優先的でないという事にも、彼は早晩気が付くのではと思います。
■ゆっくり暗夜行路を読んでいます。舞台が尾道になりました。小説の神様と呼ばれる人の文章です。自分も読むことによって、何か取り込めればいいと思います。
和辻が志賀の描写力を知り、作家である漱石に心酔しながらも、作家の夢を諦めたという伝説があるそうです。自分は漱石好きなので、何となしに漱石の後継者と言えそうな人達の事は耳にしますが、具体的にどうというのは知らないで、時間があったら触れたいと思っていました。
別の下心として。暗夜行路を読んで、グンマの高松への感情の理解に繋がればと思います。南国&PAPUWAのグンマ博士、自称ガンマ団一の頭脳を持つと言う彼の心は自分には分かりません。葛藤、和解、そんなキーワードが志賀にあった気がして、志賀直哉を読んでいます。
どうも漱石、谷崎、荷風は事象を理想化・耽溺する方に熱心で、現実面と言えば金銭的な悩みの方が大きい気がします。荷風は裕福ですが、裕福なだけに取られる事にも敏感でした。漱石達の悩みは余りに露骨すぎて、半分ファンタジーみたいなグンマには合わない気がします。
グンマ博士は。
・お金持ち ・学校を出ただけで働かないという選択も十分可能 ・美形、権力者の血統、武力・権力、生来何でもある
志賀直哉の父親も、お金持ちだったそうです。暗夜行路を読んでいて、どうにも金銭苦のにおいがしません。自由に飲食し、買春し、引っ越しし、文才豊かに悩み続ける青年って、理解するまでにまだまだ時間がかかりそうです。
漱石は義父母との関係で悩んだはずなのに、いつの間にか葛藤が金銭苦にすり替わっています。谷崎も、金銭的に苦労しただろう幼少期の事は、忘却したかのように触れません。 |
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