■暗夜行路を読み終えました。あちこちであらすじが読めてしまう事、困った事に文庫本のカバーで「謙作は母と祖父の不義の子である事に悩み、その後結婚した妻も従兄と過ちを犯し、悩み続ける」とネタバレされています。
あらすじは分かったから、謙作はどうしたのだと思いますが、そこは志賀なので漱石の様な補完的なもの、優しい誘導などなく、ひたすら謙作は尾道や鳥取を目指して出て行ってしまいます。
漱石でも行人、門他色々な作品で「出て行く」男がいますが、大体一人ではありません。常にベッタリ誰か付添いの男性が付いて回ります。家族や異性には決して語らない苦しい心中を、こころの先生は私に聞かせてくれます。
鳥取を目指す謙作に何があったかは異様に明白で、大山の景色が映画を見ている様に華麗でも。一切の理想化や甘えや自己主張を排した謙作の歩みは、一種恐ろしくもあります。
以下は根拠のない雑感です。
■ルーザー様はマジック達三人を心から愛し、何でもしてあげたいと思っているだろうと思います。率先して汚れ仕事に向かってしまうのも、人を殺す事に抵抗がないというより、そんな危険な場所に自分達が生まれた時からいる事を、誰よりも直視していただけなんだろうなと思います。
マジックは汚れ仕事を他人にやらせる事が出来ます。ハレには本当に大変な仕事は回って来ず、意外とお坊ちゃんな暮らしを成人後も続けている気がします。ハレのした事の責任は大体マジックが負います。サビはニートです。
してあげたい気持ちがやたら大きいルーザー様に対し、これまた「してあげたい」願望の強い高松がいます。高松は無事キンちゃんが生まれれば、あれこれ命令されなくてもルーザー様に代わって奮闘していそうです。
してあげたい気持ちが強いと言えば小奇麗ですが、誰よりもリターンについて考えてしまうのも、ルーザー様と高松かもしれません。ルーザー様は自分勝手でもあるし、単にマジックやサビを安心させて喜んで欲しい気持ちがお強いので、「ありがとう」と言われないと途方もなく落ち込みそうです。
高松もルーザー様同様、へこむ時は天文学的数値で落ち込みそうです。キンちゃんの誕生後、父の日だのルーザー様のお誕生日だのに彼が乗って来ないと、その後の夏季にはキンちゃんを連れて小豆島とかに隠れてしまいそうです。
他人様の子供を連れ歩けば、略取・誘拐の罪に問われてもおかしくありません。普段から高松がキンタロー坊ちゃんと一緒にいる事、父親としてどこか抜けているルーザー様に代わり、ある程度まではマジックが聞き役になっている事等で、一応即通報には至らないだろう高松。
民間のフェリーが行き来する晴天の高松港に、ガンマ団の戦艦が乗り込んできて、サンポート高松に遊びに来ていたキンちゃんが、「高松、お父様の船だ。」とお迎えを喜ぶ場面まで妄想しました。
高松港に軍艦が入れるのか分かりませんが、青の一族が婚姻しない最たる理由は、相手側ともめた時、思いつく解決手段が家庭内の問題でも武力だからかもしれません。高松はキンちゃんに親権があるはずもなく、ルーザー様の私財を当然には共有できないので、ルーザー様も油断しているだろうと思います。 |
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