■サナトリウムが舞台である小説は、トーマス・マンの魔の山くらいしか読んでいませんでした。雪山の描写の圧倒的な所と、WW1への参戦で物語が終わるのが印象的でした。
自分は今になって掘辰雄の風立ちぬを読んでいます。映画の元ネタで有名で、自分は公開後DVDで見ました。サナトリウムというと、昔国語の教科書に入っていた短編にこんなのがありました。
「戦後間もない頃。堀辰雄の書いたサナトリウムを舞台にした小説を読みふけり、ロマンチックさを覚えていた少年がいた。戦争に行っていた兄が復員し、一緒に暮らしだすが兄は病身で、最期の時間を家で過ごすために帰って来たのだった。ファンタジックな療養所の描写に夢想していた少年は、本当の病気というものを知った」・・・という内容だったと思います。
復員してきた兄がロマンチックでもファンタジーでもなく衰えていく様子が克明で、主人公の少年が自分のサナトリウムへの憧れを放棄するまでが順を追って書かれていました。読んでいてショックで、自分は長い事掘辰雄を読まなかったのですが今読んでます。
■暗夜行路には、憎むとか許すとか、謙作の神経質な面が多く出ているそうです。元来小説家は神経質なものというか、超インテリで癇癪持ちで稀代の文章家というと、漱石を思い出します。
以下はグンマの暗夜行路です。
・自分の秘密を知ったグンマ。自分を苦しめる原因を作ったのは主に2名。父の弟のサビと、ただの団員の高松。サビが謝るとか後悔するとかないので、サビには何も求められない。
・ならばただの団員の高松はと言うと、自身が大怪我して入院中。傲慢で嘘吐きであるのは以前から知っていたが、態度のでかい嘘吐きなだけあって、自分への謝罪、懺悔、何でもする。
■グンマが高松を許した場合。
マジック達、周辺のものは一安心するだろうと思う。問題の渦中にいる高松はやろうと思えば何でも出来る男であるし、マジックはシンタローがいる幸せ、サビもジャンがいる幸せを崩したくない。グンマの内面が「許す」方に傾いていない場合、非常に苦しいだろうと思う。
■グンマが高松を許さない場合
心情としては正常であるし、グンマはマジックの息子なので、自分に関わる団員の生殺与奪を握る事が出来る。いかようにも高松を罰せるし、団内に大勢いる高松被害者の会の人達とも近づける。
ただしグンマは高松と過ごした24年間を全否定し、高松から教えてもらった科学、雑学全てを捨てたくなると思う。科学者グンマの飯の食いようがなくなるし、何より同じ科学者として分かり合えそうだったキンタローとも不仲になると思う。
自分の24年間を全否定した場合、自分のより所や幸せだった思い出を捨てる事になり、非常に苦しい。高松に左程反感も覚えず島から帰って来たマジック、ハレ、サビとも心の距離が開くと思う。高松にそんな影響力あればだけど。
今更グンマが高松への反感を同世代に述べても、高松先生とバトルったミヤギ達青年陣に、「本当の所ドクターとどうだった」と根掘り葉掘り聞かれ、精神的にセカンド何とかになりそう。
■結論として、グンマが高松をどう思っていてもニコニコしている方がよさそうです。今までも両親がいないのは我慢するとしても、高松からのケアには笑顔で対応していたなら、不可能ではないと思われます。
もしグンマが尾道や大山に向かっても。尾道と言えば香川のすぐそばです。大山と言えば自然の宝庫で生物学者の独壇場です。グンマはインドアが似合うと言うか、人工物の方が似合う気がします。 |
|