■高校生の頃。(異性を意識して?)メイクや服飾に関心を持つより、(自分を見つめて?)勉強に精を出した方が魅力的な女性になれると先生方から言われました。朝礼か何かの時の話だったと思うので、自分に対して言われた訳ではないのですが、お洒落に使うお小遣いも知識もなかった自分には、福音に聞こえました。
目の前の教科書を読んで覚えれば、自分もいつかアイドルみたいな可愛い女の子になれると信じました。10代後半の思う事とは思えない幼稚さでしたが、メイクにせよ服飾にせよ、お金がないとどうにも手が出ません。
勉強して、いい大学に入って、いい所に就職しないと自分の欲しい物は買えません。群馬の山奥ではマイカーがないとどこにも行けないので、放課後のウィンドウショッピングなどテレビの中だけの話です。
就職し、車を買い、欲しい物を自分のお金で買えるようになった時、もう自分は色々手遅れでした。憧れた可愛い女の子になる可能性は年齢的にもうなく。お金を稼いでから可愛い女の子に変身し、恋愛をして幸せになるという仮定と、辿り着いた心境が余りに異なりました。
何故って、自分で自分を幸せに出来る力を自分は得たのだとするなら。恋も彼氏もいつの間にか不要のものになっていました。自分が一番辛かった時にその存在をカケラも感じる事が出来なかった対象に、今後心を奪われる事も、心を許す事もありません。
■学校を卒業してから京都を訪ねると、自分の群馬弁にいたく恥じ入る時が増えました。20歳前くらいなら、下宿中の学生くらいなアンニュイさで誤魔化して来ても、相応に年を取り、自分のお金で市内を観光すると、田舎丸出しなのを自覚して実に恥ずかしいです。
自分は日本各地、あちこち観光して回った気がします。でも京都だけは「観光客」という甘えが通用しません。観光客が多過ぎるからだと思いますが、連休中の土砂降りの中、やっと止めたタクシーに何故か逃げられ、ボタボタ濡れ鼠になった後、同じタクシーを交差点で再度捕まえたのは忘れないと思います。
慣れない土地における最後の交通手段はタクシーですが、下京区において群馬弁丸出しで止めると、言葉が通じない余りに乗車拒否されかねないのだと初めて知りました。多分いきり立っている時の上州弁は、他県に劣らないくらい獰猛だろうと思います。
田舎において基本、人々はいつも同じような人と会い、同じような事を話します。なので言葉は勢い減って行きます。しかし一端こじれると、大体にして雅さゼロの言語なので、洗練されていないイントネーション、語彙、音量等、とても都の人には耐え難いものになるだろうとも思います。
実際群馬の上州弁には、恐ろしく古い音便が多数あるらしです。京都の歴史が平安京からだとしたら、群馬の歴史は古墳時代がスタートです。
■くどく、高松観連の妄想です。
キンちゃんの体を意図せずのっとり、若い高松を混乱に陥れてたのはシンタローです。シンタロー自身には覚えのない事でも、状況的に彼は高松の視線を浴びます。ルーザー様の血を引く男の子にしては、明朗で友達も多く、父親や叔父達とも気軽に接しているあたりで、高松は首を傾げたと思います。
氏より育ちだと解釈し、高松はシンタローが幸せに過ごす事を切望したのでしょう。高松の価値観でいえば、一ガンマ団員の庇護なんて全く蟷螂の斧に過ぎず、ただの香川人の手によって育たざるを得ないグンマは、憐れむべき子だったのでは。
この場合困るのはシンタローです。高松が哀れなグンマの執心するのは、形的にグンマが故ルーザーの息子であるから納得するにしても、何故自分が高松に関心を持たれないとならないか疑問だったと思います。
常に面倒くさい立場にいるのがシンタローですが、マジックの息子である彼は、既に生まれた時から全世界の注目の的だったでしょう。悪鬼の様なマジックが溺愛する、たった一人の少年と言えば、人の見る目も違います。
そういう本人に不愉快かもしれない事実は、皆、余程親しい間柄でないと滅多に面に出さないと思います。貴方はマジックの息子、覇者の愛児なのだという点をくどくど言うアラシヤマは実に失敗をしています。シンタローの周囲の人は、その事実こそシンタローが一番ナイーブになる部分だから、多くは触れません。
シンタローは腫れ物に触る様な周囲からの扱いの、末端として異様な医者の視線をどうとでも浴びたのかもしれません。視線を浴びるのはいつもの事、視線の意味は嫉妬、功利、敬意と色々あるから気にしてしきれるものではないし、とりわけ変態で名高い医者の内面なんて知る由もない、と思っていたならシンタローは正しかったと思います。 |
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