madeingermany

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...... 2017年05月10日 の日記 ......
■ エマ   [ NO. 2017051001-1 ]

■図書館で漱石関連の書籍の前を歩いていたら、いつの間にか中原中也の本を手にしていました。山口に行きたいなあと思ってネットを検索していたら、中原中也に当たり、何か読もうと思いました。

漱石については、自分でも驚くくらい関連本を読みません。ひたすら小説を読んでいます。漱石は虞美人草の厚化粧で無理矢理な所が晩年になって嫌だと言っていたそうですが。漱石の世界観を小説の中で再現するなら、あれくらいコテコテでないと難しい気がします。

「知人の妻は、実は昔自分と交際があって、やむを得ない事情で知人と結婚した。しかし実は今でも猛烈に自分を愛していてくれて、知人なんかより自分をひたすら愛しているのだ。世間でいう結婚制度なんて無意味だね。」

明暗の津田の妄想はこれに尽きると思います。そんな妄想しながら、延子と早々に子供を作っている津田は漱石そっくりです。(作品と作家は別かも知れないが。あんな漱石が、鏡子さんと何人子供をもうけたのか思うと、漱石関連の書籍は余り読みたくなくなる。)




■ジェーン・オースティンのエマを思い出していました。明るいラブコメ小説ですが、エマを筆頭にほぼ金持ちしか出て来ません。生活が苦しい層の人達も出て来ますが、あくまで憐れむべき人達と言う扱いです。

エマの家柄を思えば彼女の威風堂々とした振る舞いには、うなずくしかありません。恵まれ過ぎた彼女のキメ台詞は、「アタシ結婚しない(意訳)」です。彼女をそれとなく諭し、大人の女性になるよう導いてくれるのがナイトリーです。

オースティンの小説に出てくる、メインの男性達は大体いい人です。ヒロインの家族や友人、地域の人達がギャグタッチで書かれる事が多いので、分別のあるヒーローは輝いています。お金持ちで理性的な男性を書くオースティンは、生涯独身で、何人もいた兄達の支援で暮らし、作家活動をしていたそうです。そりゃあ、年上の男性へ信頼感も生まれるでしょう。




エマの父親とフランクの伯母は、健康オタクらしいです。エマの父親の自身や家族、周囲の健康を案ずる姿はギャグ、エマや周囲への愛情として、明るく軽めに書かれています。

オースティンの本領は、フランクの伯母の描写です。フランクは伯母が亡くなるから、遺産を手にし、愛するジェーンとの結婚を可能にしました。当時の英国の富裕層なので、働きませんし、周囲を押し切る様な結婚もしません。




フランクは伯母を愛していた様ですが、伯母の自身の健康を案ずる過度さに辟易し、仮病だ、気のせいだと言っていました。そして実際伯母が亡くなると、もらえる遺産と、ジェーンとの結婚が叶う事で彼は歓喜します。

オースティン曰く。「伯母は傍迷惑な健康への不安ぶりを長年発揮していたが、その死によって、健康への不安は妄想でなかったのだと証明されて、よかったではないか(意訳)」。オースティンらしい、攻撃的で皮肉な言い回しです。伯母の死を自分の幸福ととらえるフランクもあれですが、大体にしてオースティンの作品はそんな感じです。

比較的温厚な作品のマンスフィールドパークでも、ヒロインは貧乏で下品で乱暴な生家より、金持ちで優雅な養子先を自分の居場所と心得ています。そうだろうなあと思うのですが、割り切りの鮮やかさが見事です。

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