 ■乙嫁語りを読んでいます。画集の様に美しい漫画、若く美しく賢く強いアミル。自分には縁のない世界で、かえっていい観賞対象を得たと思って読んでいたのですが。パリヤを応援してます。乙嫁語りの世界において、「刺繍が苦手」「動いている方が好き」「恋愛に自信がない」彼女は個性的で、あの世界に埋もれない所がいいです。
■家庭内の不祥事とか、閉じた世界でのトラブルは見えない、表に出にくいと言いますが。どうして悪い事なのに、表に出ない・当事者が表に出そうとしないのか、長い事分かりませんでした。
親に虐待されていた子供も、時として酷い親をかばう事があるそうです。その子供がどう足掻こうとも、多分警察や行政に勇気を振り絞って訴えても、「ワガママ言わないでお父さんお母さんの言う事を聞きましょう」と言われて、家に帰されそうです。親を諦める方が、被害が少なそうです。
それくらい世界には上下関係が隅々にまであって。下にいるものが「嫌だ」「辛い」「止めて」と泣こうとも、上の者が意に介さない場合、永久に現状は変わりません。下の者の幸せとは、上位の者の機嫌次第です。
虞美人草の小夜子が小野に「東京はいがかですか」と聞かれて。小野は小夜子には許嫁同然であり、小野が親切にしてくれるなら東京は小夜子の楽園たり得、小野が小夜子を振るなら、東京は小夜子の墓場になる、という描写があります。明治が舞台なのに新鮮です。
上下関係がある場合、下の者が上に苦痛等を訴えても、「そんなのはお前の妄想だ」と上の者は言い切って聞かないでしょう。何故なら上下関係の根幹たる、「上は下の面倒をみる」というイデオロギーが仮にもある以上、下の者の苦痛や不満は、上の者の手落ち・失敗になります。下の者さえ(我慢して)黙ってニコニコしていれば、上の者の義務は完遂され、上位に居続ける事が出来ます。
なんで閉じた世界では自浄作用が起きないのかな、と考えていました。高松も何度となくグンマの悲しさや苦痛を無視したでしょう。グンマが幸せでないと高松のガンマ団・青の一族周辺における地位が霧散するからです。
「グンマ様は幸せでなければならない」という高松の信念が、大いにグンマを不幸にした気がします。キンちゃんやルーザー様の機嫌になら過敏なまでに反応するだろう高松の、ほとんど唯一上下関係の上位に立った瞬間でした。グンマが本当の家族と暮らす様になれば、高松は彼の信念ごと吹っ飛びます。 |
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