madeingermany

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...... 2017年10月16日 の日記 ......
■ 井上靖   [ NO. 2017101601-1 ]

■グンマ様が書きにくいのは、マズロー的な三角形の頂点の方にグンマがいるからかなと思いました。食べて寝る事だけで精一杯の人が思う幸せと、黙っていても暖衣飽食のグンマ様の願う幸せは、同じじゃないだろうなと思います。

シンタローもキンちゃんも立派な暖衣飽食ですが、シンタローはマジックと言う越えられない壁兼故郷があり、キンちゃんにも同じような意味で、ルーザー様と高松がいます。

マジックや、ルーザー様・高松にある程度の恋着があればこそ、壁ないし故郷に似た思いをキンちゃん達は抱くと思いますが、グンマはもしかして余り人に恋着しない人なのかもしれません。グンマは、いきなり自己実現レベルのマズローの頂点に飛んで行ってしまったのなら、私には書けない人なのかもしれません。



■よく結果が全てとか、結果を出せないなら過程は無意味とかいう発言が飛び交います。同意しつつ、自分だけは違っていて欲しいと思います。仮に上手く行けば喜べばいいし、つまづいたら次へのステップだったと思う事にしたらどうかなと思います。自分でそう思えばいいだけなのかなと思います。

色々が上手くいかないと、不機嫌になって暴れるのがルーザー様とキンちゃんですが。まだ子供であるキンちゃんは兎も角、ルーザー様は高松が尊敬するくらいなのだから、努力して、積み重ねて、それでも上手く行かないと怒るお人だったのでしょう。



結果が出なくても、自分の積み重ね、過程を評価してほしいとは誰しも思うと思います。ルーザー様の場合、一生かけて兄弟に尽くそう・尽くしてきたという自負が一瞬で雪崩になって消えました。

マジックやサビにすれば、「(ルーザー、ルーザー兄さんなんかより余程)愛していたジャンがいなくなった」結果の方がいとわしく、ルーザー様なりの兄弟を守ろうと言う積み重ねは無価値、無意味でした。



■井上靖の時代物を読んでいます。戦国城塞群です。長篠の合戦から本能寺の変の後くらいの頃を、複数の男女の目から見る小説です。

時代物と言うと、時代背景を説明的にされると面白味が減る時がありますが、井上靖は地の文が面白い稀有な作家だと思います。普通小説は、キャラクターが出て来て、どうしたこうしたというのが小説的で面白いのだと言えそうですが、井上靖の文章は語り口が素晴らしいです。登場人物の動きが、最小限で最大の効果を生み出している感じです。



多分自分が一番最初に読んだ井上の時代小説は、淀どの日記でした。丁度戦国時代にはまっていて、劇中の人物の名前なら知っていて、つっかえずに読めて楽しかった思い出があります。

井上靖のものですごいと思うのは、分からない事を分からないと言い切れるところだろうと思います。すごく聡明な主人公やヒロインを出して、世界観をガリガリとアナウンスさせるもの、時代物を面白くするツールかなと思いますが、時代・人間・事件等のバランスがとても優れている作家だなと思います。

しろばんばみたいに、これといって大事件がある訳ではないのに、重厚で貴重な時間を、読んでる間は味わわせてくれるのが、井上靖なんだろうなと思います。

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