■点と線についてです。独断と偏見です。
・冒頭の4分間に、お時と佐山が楽しげにホームにいる姿を、安田は小雪から連れて来た女中さん達に見せねばならない。お時と佐山が既に車内にいる可能性もあり、トリックとしては不完全だという指摘があると聞く。
・従順なお時に、その4分間に絶対に佐山とホームにいて、談笑しているように安田が命じたのだろうと自分は思う。和装のお時が腕時計等をチロチロ見ていては、佐山が怪しみかねないから、その命令は実行されない恐れもあった。
・もし女中さん達にお時と佐山の睦まじい姿を見せるのに失敗したら、安田はお時を熱海で下車させたままにし、佐山だけ香椎で自殺に見せかけて殺すつもりだったのではないかと思う。亮子の殺意は主にお時への物だったと思うが、汚職事件云々が焦眉の急ならば、安田にとって、死なねばならなかったのは佐山一人である。
ものすごくどっちでもいい理由で死体にされたお時に涙が止まらない。読んでいて、周囲の女性達に絶対に自分のプライベートを話さなかったお時が、誰に見られているのか分からない駅のホームで、愛人男性と談笑するはずがないと、冒頭から思った。
■本当は怖い漢字の成り立ちを読んでいて、あまり怖くなかったのを不思議に思いました。文学部出身のせいもあると思うのですが、漢字とは表意文字なので、「なにがあったか」「これはなんであるのか」を目で見て判断できるようになっています。非常に合理的な産物です。
本の中にあった、あらゆる残虐な行為、光景は本当にあったことだと思います。自分はお化けや怪談がダメですが、本当に会った怖い話以前に、CLAMPでないですが、本当に怖いのは人間だというのは、そうだと思います。
多分、動物の骨や、布にそれらの原初的な漢字を書いていた人は、それが仕事だったのでしょう。誰がいつ、どんな風に刑罰を受けたのか、等コツコツ書いて記録するのが仕事だったろうと思います。結果、「なにがあったのか」を過去の人が知る事が出来ます。
あと。多分、人の体が切られた様子、弱って行く様等を書き記した人は、元気だったのかもしれません。目の前の現象を漢字にして残す人ではなく、刑罰等を命じた人の方です。自分の権力の偉大さが、克明に刻まれていくのだから、漢字を最初に使った人達は愉快だったでしょう。
これは不思議でも怖い事でもなんでもなくて。普通に家の中でもある事だと思います。父親の許可、ないし同意がなければ、数百円のものを買う、食べる事も絶対に許されなくて。家を出るにも、田舎だからバスも電車も遠く、父親に「いつどこで何を誰とする」と克明に説明し、納得を得た上でないと移動できず。
成人しかかっているのにバイトも許されず、父親のお情けでしか、人生を楽しめないのはもう嫌です。自分は、漢字になった古代の人達を親しく思う反面、どうしてでもそんな環境から抜け出したいと思います。父親の家庭内での権力を刻むための漢字になるのは沢山です。
無駄に成人してしまった今、あんなバイトがしてみたかった、若い頃あんなことがしてみたかったと、呪うような気分です。一個一個時間がかかりますが解消中です。父親の許可、同意なんて、生きる上でクソ程もいらなかったのだと知りました。 |
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