■忘れていたのですが。明暗の頃の東海道本線は、御殿場を通っていました。劇中に何度も出て来るコースは、国府津まで東海道本線で行き、小田原電気鉄道に乗り換え、その後小田原で降りて、熱海鉄道に乗り、湯河原下車になります。続明暗で、津田と清子が馬車に乗るのは、熱海〜湯河原間だと思われます。
温泉と電車という点ではとても面白い旅路です。しかし、続明暗で暗澹たる思いに支配された延には、辛い道だったでしょう。続明暗の最後、津田は継子の見合いは吉川夫人の差し金だから中止した方がいいと言いますが、そんな愚痴くらいで津田は夫人と別れられない気がします。彼女は漱石がやっと見つけた、「甘やかしてくれる金持ちの人妻」なのだから。
湯河原から帰った延の、別人の様な暗さに、津田は苛立ち、岡本や継子は悲しくなると思います。しかしその変貌は、三千代も、直も、静も通った道です。たまたま「結婚は女を駄目にする」という説が今回女性目線で書かれただけで、漱石の書く既婚女性は全員不幸です。
続明暗は漱石が書いたものではありません。体の不調にうるさい漱石だから、健康体だった延にも身体的トラブルを用意していたと思いますが、水村美苗は延について精神的ダメージを書くにとどめています。
■休日らしい休日を過ごしました。図書館と日帰り温泉に行っただけですが、気の詰まる日が続いたのでひとしおです。日帰り温泉から出てきたら、雪が降っていました。
普段群馬県のローカル紙を読んでいます。図書館に行った時くらいは、全国紙が読みたいと思い、産経新聞を読んでいました。興味深い記事がありました。読売新聞の人生案内の様なコラムでした。
「35歳の女性。宝塚が大好き。年齢的に焦りを感じ、婚活を視野に入れるも、ヅカの男役と現実の異性を比べてしまい、困惑中」という相談でした。
読売新聞なら。「高齢出産待ったなし。育児のスタートは早い方がいいから、ヅカ関係のポスターやグッズをゴミに出して、現実の男性を敬って暮らすいい女になるべし」と言うだろうと思います。しかし産経は違う様です。
「結婚出産したいなら、通過点であるにせよ「異性」という存在を認めねばならない。現実の異性は、ヅカの男役とは全く違う、不完全な存在である。しかしながら人生のエネルギーの大半をヅカの男役への応援にあて、幸せを感じるのも悪い事ではない。」
男役の女性達と、相談者の女性が結婚出産する事は出来ません。産経の意見は冷静です。いい時代になったと思います。もしくは産経が新しい視点なのかもしれません。
相談者の女性にしても、年齢的な焦りや周囲の圧力等で結婚を視野に入れざるを得ないだけで、幸せかどうかを目盛りにして案件を考えたら、かなりシンプルだろうと思います。 |
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