 ■宮尾登美子の「天涯の花」を読み終えました。以下独断と偏見です。天涯の花だけではないのですが、あまりに物語を動かす要素が多く、処理しきれていない気がしました。今回の作品だけで、
・ヒロインが捨て子で施設出身 (延々、出身施設について能書きがあるのだが、その後の物語の展開に一切関係ない。)
・山の中の神社 (ラノベ?男性読者が女の子の処女性を求めて、山奥の巫女に憧れるなら分かるが。)
・高山植物 (ヒロインの潔癖性、孤高の姿を描くために、延々高山植物のご高説があるのだが、そのヒロインが不倫愛に走るので説得力がない)
・平家落人伝説 (四国らしいエピソードなのだが、これまた出オチの壮大な小話に終わってしまった。)
これだけの情報量を小説に落とし込むのは困難でしょう。孤児が主人公の小説は多いですし、他の男性作家に負けない小説つくりと言うと、「女の世界」的なものを書かざるを得ないだろうし、作品がヒットするためにはなりふり構わないのかもしれません。孤児、不倫、いずれもお茶の間で話題になりそうです。
「天涯の花」は結局何の話かと言うと。恩知らずで冷たい、独りよがりの自己陶酔型の、夢見がちな女の子が、これまたフラフラした既婚者に引っかかり、「運命の愛」と錯乱し、男性の妻や家族に何の罪悪感もなく、自分の「恋」に進む話です。
あんなに嬉々として既婚者との恋に走る女の子、初めて読みました。孤児であるというデメリットが、いわゆる「普通」の夫婦を間近で見たことがなく、世間一般の家族的な倫理が見についていないというなら、納得です。男の妻が怒り狂って、山の中の神社に来るのですが、このヒロイン全然平気です。本当の奥さんに大した事の出来ない男を、何故信じられるのか自分には分かりません。
こんなヒロインが書きたいのなら、神社だの落人伝説だの、盛り込まなくてもよかったのでは。ヒロインの周囲の人達はいい人ばかりなのに。ヒロインは周囲の人達に残酷です。「大人しくていい子」という周囲の評価は、ヒロインが周囲を「あんた達はアタシにふさわしくない」と思って、静にかにしていただけです。
物語の最後でヒロインは、求婚してくれていた真面目な青年に「アンタと結婚してあげてもいいわ、アタシも結婚しなくちゃだし」という態度に出ます。その後、青年の親類から「あの子は所詮孤児」という陰口をたたかれ、ヒロインが「傷つき」ます。
しかし孤児だなんだと言う前に、ヒロインの態度の大きさと冷たさを読めば、いつかは陰口くらい浴びるだろうと思いました。問題はヒロインの出自でははないような。 -----------------------------7e2e01302e4 Content-Disposition: form-data; name="image"
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