madeingermany

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...... 2018年04月03日 の日記 ......
■ 雁   [ NO. 2018040301-1 ]

■最近コピー用紙に書き出したネタだけで、夏コミの新刊になるんじゃないかと思いました。既刊とネタが被らない様にと真剣になりますが、ルザ高の場合、スペクトラム的に色合いが変わるので、今日のルザ高は、明日のルザ高ではない様な気がします。

南国&PAPUWAの特色は、とっくに人間関係が破たんしたはずの人達が、素知らぬ顔で何十年も一緒にいる点だろうと思います。グンマと高松とか、もう顔を合わせない方がお互いのためじゃないかと思いますが、しれっと近くにいる怖さは半端ないです。キャラ同士の物理的距離が近い分、心の距離は億光年レベルなのではと邪推します。



劇中で「一瞬の出会い」「この時だけのきらめき」とかの描写もなくないのに、結局キャラ達の大部分が最終巻までフェードアウトせずに寄り集まっています。破綻しているのに、色々な理由で切れない地縁血縁の人達を見ている様で、場の空気の濃さが白眉です。

そんなドロドロの中、何故ルーザー様がいないのだろうと思います。ちょっとくらい高松が、(キンちゃんの同意があれば)キンちゃんに癒されてもいいじゃないと思います。ルザ高でキン高で、ルーザー様存命パラレルの本が作りたいです。



■鴎外の雁を思い出していました。そんなに長くない話ですが、完結に2年かかっています。ヒロインは、高利貸のお妾さんのお玉です。高利貸というだけであまり人から好かれない職業ですが、そのお妾さんと言うと更に風当たりは強くなります。

若い女性が女中さんと二人暮らしとなれば、大体生活費の出どころは一つです。未造も目立たない様に通い、しかし奥さんにばれる所は凄惨ですが読み応えがあります。何故、育ちのいい鴎外にお玉や未造の世界が書けたのか不思議でなりません。




お玉も最初から2号さんになろうなんて思っていなくて。普通に大人しく暮らしていたら、未造に言いくるめられて2号さんになってしまっただけです。親子で飴屋をして、のどかに暮らしていた描写には泣けて来ます。岡田みたいな男に憧れるお玉ですが、岡田にお玉を救い出すタフさはなかったと思います。

なんで雁を思い出したかと言うと。お玉が(しつこいですが)宮尾登美子得意の「2号さん」だからです。まさかクレオパトラでも、お妾さんVS本妻、ないし、父親みたいな男×ヒロインをやるとは思いませんでした。宮尾登美子の書くヒロインは、エヴァのミサトの様に、父親×自分が好きみたいです。



エヴァのミサトも、肝心な時に「女の勘」「女は〜」と言い出して気がそがれましたが、宮尾登美子の書く女性にもそんな点が多いです。エレクトラコンプレックスというより、社会的に成功した男×ヒロインを作者が好むために、結果的に不倫になるのだと思います。こっそり自分の愛を貫くのではなく、「彼と子供だっているし、結婚式?も挙げたし、彼が本当に愛しているのはアタシ」と言い切るヒロインに毎回絶句しました。

別に小説って難しい話も、女が「男勝り」になる必要もなく、淡々と作者が内面を語ってくれるのが面白いのではと悩み、鴎外の雁を思い出しました。雁が面白いのは、誇張も脚色もない、未造達の暮らしの描写に吸い込まれる事、そしてお玉の悲劇こそが、あの鴎外の内面の苦痛の反転だったのではという、吐露にあるのではと思います。

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