■漱石と谷崎と荷風が好きなのですが。共通項は、皆、金にうるさい所だとふと思いました。漱石の小説と言えば金と性愛の事だけ。谷崎は金遣いが荒い分、源氏の様に「売るため」にひたすら書く男。荷風は大金持ちですが、鷹揚な男だったとは言い難いです。
当時なので、優雅に「北海道に新天地を求める」「軽井沢の別荘に引っ込む」等を三者ともせず、出かけたとしても熱海、湯河原あたりの可能な範囲で活動しているのに泣けます。白樺派の作家についてだと、調べても皆、金持ち過ぎてイメージが追い付きません。
■彼岸過迄の時系列を考えていました。敬太郎の卒業、就職活動、須永の一族との交流の開始、と敬太郎はシンプルです。須永の時系列はよく分かりません。
・物語初期で、敬太郎は「睦まじい」須永と千代子を見ている。須永と千代子は結婚するのかしないのか、敬太郎は鼻を突っ込むあたりで、彼岸過迄最大のバトルが始まる。
ややこしいのは冒頭が敬太郎の冒険譚、中途に松本が娘を失う話、後半にドッと須永の話と、語り手も時系列もバラバラな所。
・敬太郎は須永の友人。須永の義母は三人兄弟で、須永に就職を斡旋してくれたのは須永の叔父、須永のフィアンセである千代子の父になる。インテリで最後の語りを請け負う松本は、冒頭で敬太郎が「尾行」した男。須永と千代子には共通のおじさんになる。
松本は須永と千代子に対し、平等な立場なのだが、別に尾行される様な事はしていない。
・・・時系列
■須永生まれる 須永の生母が亡くなる 須永の父の死
■松本の娘の死 ■須永、高木に嫉妬する
■松本、須永を「残酷に拒絶する」 ■須永、関西へ旅立つ
■須永、敬太郎、帝大卒業 敬太郎の尾行、就職、須永&千代子と親しくなる
・彼岸過迄がややこしいのは。敬太郎が見知った須永&千代子が、既に彼等の結婚問題を過去のものとしているからです。あくまで須永は敬太郎のお友達、千代子は就職を斡旋してくれた人の娘と言う登場の仕方です。物語がどんどんさかのぼります。
松本が雨の日に娘を失ったのが、時系列的にどこなのかよく分かりません。高木が出てきた前か後かでしょう。千代子は宵子の急死、「卑怯」な須永がちょっと旅行しただけで、アッサリ・スッキリ帰って来てしまった不甲斐なさを味わった訳です。
(須永が千代子への愛情を捨てた訳ではないと思うが、敬太郎の前ではアッサリ振る舞っている事について。それからの代助の様に、本命の女性の側にいるために、あえて女性への性的欲望を旅先で芸者を買って、晴らしていたのではないかと思う。
都内で芸者を買えば身内にばれそうでなので、あえて関西へ旅行して、千代子に捧げればいい童貞を捨てて来たのだと思う。須永は肉欲と愛情を、芸者と千代子に綺麗に分けて平気だろうが、セックスも愛も須永に頼らざるを得ない千代子は永遠に地獄だ。) |
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