■鉄のマリア像みたいな存在の一つが、SL、蒸気機関車ですが。懐かしい、レトロ、かっこいいと言う感じで眺めるならよくとも、あれが機関車と機関車の衝突の事故等起こすと、巻き込まれた客車の乗客は、煙と熱気と蒸気を浴びると聞き、ゾッとしました。
今の電車は速度も乗客数も増加した事もあり、事故が起きれば機関車時代と同じくらいの危険性をはらんでいますが、動力が分散しているので機関車より制御しやすい事、複線の路線が増えた事で、安全性が増しているそうです。
今、「新幹線を作った男」という本を読んでいます。宮脇氏は新幹線のスピードと車窓のよくなさが好きじゃないと言っていましたが、新幹線誕生前の「鉄道」は、乗る方も動かす方も残酷な面があったかもしれません。乗っても乗っても、東北本線も、東海道本線も長過ぎます。新幹線ありきの今の方が、恵まれています。
鉄向けの本を読むと、レトロ愛好的な感じが満ちた本によく出会います。全然悪くないし、昔の列車も大好きですが、新幹線の誕生と国鉄民営化は正解だったと思います。比較する話ではないと思いますが、昔の鉄道は、とても女性一人で乗れるもんじゃなかったと思います。
■「休日は家で休むのが正義。アウトドア等で出かけると、脳や心身が疲れ、逆効果」との記事を読みました。確かに未知の場所で、慣れない事をするのは疲れます。
しかし自分はわずかな休日に鉄道に乗ったり、温泉に行くのを至上の楽しみにしています。家で原稿を書いていたり、イベントのための遠征をする時もありますが、ただ出ているのも好きです。
ただし。昔、父親?にあちこちに引きづり回された時期があり、それは嫌でした。自分の意思で出かける訳でもなく、車に乗れば酔い、食事はコンビニ、目に入るいいものと言えば自然くらいの死への旅路でした。
その後自分の足で同じ名所を訪ねた時、「ここって、こんなに素晴らしい場所だったんだ、ごめんね〇〇寺」とか感慨に浸りました。散歩される犬でさえ、気が向かないと「イヤ」を言うのに、人間の上下関係はイヤなものです。
■湯河原と言えば明暗ですが。大正時代の小説なのに、全く古びた感じがありません。明暗の主な登場人物はこんな感じです。
・他人に優しくない美男子、津田 ・津田にベタ惚れの妻、延子 ・津田の恋人だった女性、現在は既婚 清子
・津田をやたらに可愛がる有閑マダム 吉川夫人 ・津田にブラコン的な愛を振りまく妹 秀子 ・津田の親友を自称する小林
・津田の実家、叔父一家、津田の勤め先の人達 ・延子の実家と言える、叔母一家
津田に甘い構成です。皆、津田のどこがよくて、津田をチヤホヤするのか読んでいても分かりません。仕事には不熱心、家族や友人には冷たく、借りた金を返さない男です。
延子は、津田の素っ気ない所に何故か惹かれ、結婚してしまいます。お見合い結婚が普通だった当時なので、婚前交際はありません。延子の思いは「実った」はずなのですが、津田は全く延子を大事にしません。いつも延子を清子と比べています。「何かがおかしい」事を延子は察しつつも、真実がつかめないでいます。
津田に愛情を抱く吉川夫人、妹の秀子にすれば、延子は「何もしなくても」邪魔な存在です。津田が延子に「清子への愛」を隠している事を知っている2人は、「幸せ」なはずの延子をしめあげる様に追い詰めます。
漱石の小説はいつもそうですが、「何も起きていない」のに妙な息苦しさがあります。自分を愛さない津田に、ダラダラと尽くし続ける延子が痛々しいです。「結婚は墓場」を地で行く津田と延子に、救済がないまま明暗は未完になりました。 |
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