■細雪の雪子と言えば。異様に男への注文が多い女です。妙子の方が男にうるさそうですが、実際は、雪子の方が「男」にやかましい女なんじゃないかと思います。
そんな雪子は、義兄が大嫌いです。渋谷に住んでいても、泣くほど嫌だそうです。周囲はホームシックだろうと好意的に解釈しようとしていますが、妙子が明らかに「本家と暮らすなら死んだほうがまし」と口にしてしまうのと同じくらいかそれ以上に、雪子は辰雄がキライです。
鶴子も辰雄も、斜陽の蒔岡家を背負いながらよく耐えていると思うのですが。家の最盛期を知っている雪子には、耐えがたい事が多いのかもしれません。幸子が一番安穏に生きている印象ですが、思えば谷崎が奔放に書けば、一番「ひどい目」に遭うのは幸子だったでしょう。(卍で生き残った女の人みたいに)
辰雄は
・ケチ(やむを得ない点) ・子だくさん(男にしつこくされるのが雪子はイヤ) ・末っ子(御牧が庶子である事に、雪子はNGを覚えたんじゃないかと思う) ・名古屋出身(京阪神以外は日本じゃない認識) ・特に趣味がない(仕方ないじゃないか) ・帝大出身ではない(別にいいじゃないか)
等、明らかに見合いだったら雪子がNGを出している男です。雪子は御牧についても、散々心の中でダメだししながら上京していったのでしょう。
■素人の文字書きが私家版とはおこがましいのですが。何回かキンちゃんと高松の話を書いて、いきつくところが私家版という言葉でした。
ISBNコードがない本という意味で、すべての同人誌は私家版と呼べそうです。
でも一応、「人様に読んでもらうもの」と思って書くものと、行きつく先が私家版というものはやはり違うかもと思います。「そのキャラらしく」「作品の持ち味を忘れずに」とか思いながら書くのと、「こうなんだよ、こう、お天道様が西から上ってもこう!」と言うのは異なります。
昔、「竹淵さんの文章は強い」と担任に言われたのを思い出します。
「〜であるべきであるが」などではなく、「〜という事もありえるが」などの柔らかい表現を探す癖がある程度までは身に付いたと思います。
だからこそ、こう自分的にはロックなものが欲しくなるわけで。アニメのうたプリで、急に歌い出す感じの。うたプリは相応の前振りと、確固たる楽曲あってのものですが。
漱石はあんまり私家版はやっていない気がします。岩波書店のあれが私家版らしいですが、あまりに高名すぎる例です。
谷崎はむやみに私家版を出している気がします。内容がそもそもグロい・エロい・マズイ時が多いからなのかなと思います。細雪とか、時局が違っていたらどんな「ひどい」話だったのか、大変気になります。貞之助が、幸子も抱き、雪子も抱く未来が見えますが。
荷風は
歩く私家版、息する発禁作家みたいな存在なのかもしれません。時局が許すならそれもありだと思いますが、血縁者は気が気じゃなかったと思います。
荷風は父親からはあれこれ許されていても、母と弟と仲が悪かったと自分で書いています。むしろ、どうして仲良くできると思ったのか荷風に聞きたいです。 |
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