■あんまり意識しないと気が付かないのですが。谷崎の不自然さについて考えていました。女版、青の一族状態と言うか(大家族なのにほぼ同性しかいない)
松子さんは根津さんの奥さんです。出会った時は、堂々根津さんの若き「奥様」でした。つまり重子さんも、谷崎とは全然無縁の根津さんの義妹であり、森田家のお嬢様でした。
後年の千萬子さんも。
松子さんの実子のお嫁さんなので、別に谷崎のさらなる後妻さんでありません。義理の子供の奥さんなので、義理の義理の存在と言う、一回聞いただけじゃ分かりにくい関係です。
なんでこんなに分かりにくいかというと。
谷崎が異常なくらい、彼女たちに打ち込んでいるからです。一途に愛しているというより、まさしくミューズであって、生身の人を愛しているとは思い難い愛の様相です。そんな愛し方じゃ、普通の女性は逃げていくと思うんですが。
(谷崎も過去、ミューズだなんだと言わずに素直に意中の女性と結婚していた時期もあったらしい。結婚とはイヤな現実の連続だし、気に入らなかったらしい。谷崎が気に入るような女性、シチュエーションは彼の文章の中にしかないと思う)
自分とミューズ達の周囲にいる男性を徹底的に無視している所に、異様さを感じます。松子さんの生んだ男の子や、自分の本当の娘の夫、千萬子さんの夫、根津さん、重子さんの夫、と谷崎の周囲にも男性が普通にいるはずです。
キレイに細雪等ではまとめていますが、谷崎の無視?ぶりに書簡集を読んでいるとゾッとします。素晴らしい小説が生れたものの、谷崎の周囲にいる女性達の苦労は想像できません。
(しかも女性達の労苦を無視するのも谷崎流。彼の速記や秘書業務なんて普通の女性じゃ無理なのに、顔と体で選んだカワイイ娘さんを捕まえては一時可愛がり、膨大かつ緻密な仕事についてこれないと放り出したとか)
戦時中、岡山で荷風が「住みたい」と言って断られたのも有名な話ですが。谷崎の美の庭に、谷崎と同等かそれ以上の個性的な男の居場所はなかったと思います。荷風かわいそう。 |
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