■谷崎の蓼食う虫を読んでいます。以下雑感です。
・男女平等みたいな事を要は妻に言うが。
絶対無理 当時、女は子供を置いて離縁されていくものだし、経済的に美佐子が独立していくのは絶対無理
美佐子の父が美佐子に協力的・同情的ならまだしも、絶対無理だと思う。自分は贅沢に愛妾と隠居暮らしだが、美佐子にはアホみたいに冷たく、堅苦しい事を言うと思う。
(男、男親とはそういう矛盾していて、こちらの事情も自分の愚かさも理解できないものだと思う そして矛盾を指摘するとバカギレする生き物だと思う 竹淵の実父だけ?)
当時は女であるだけで、生きていくハンデが巨大すぎると思う。リアルな松子さん達は非常に分かりにくいけど、「女が一人で生きていける時代じゃない」事を思えばわかる気がする。男に万事頼らないと、生きられない時代。
美佐子も感情面はともかく、要に死ぬまで養ってもらわないと今のような贅沢な暮らしが出来ない事は百も承知だろうと思う。後は、身を売るしかないんだから。
阿曽も、そもそも既婚女性と出来てしまえるあたりで、とても誠実な男だとは思えない。西洋では〜と要はアホな事を言うが、美佐子の立場程嫌らしく、恐怖させるものはないと思う。
「金がない」「金が欲しい」事が谷崎文学の根底の思想でもあるので、美佐子の貧乏への恐れはないとは言えないと思う。美佐子は夫に愛されない、財産も名誉も失うと言う地獄の淵にいる。そんな美佐子を、「厳しく叱る」だろう父。みんなイヤ、ヒドイ。
・結局、息子の事を誰も考えていない。要は、傷つけたくない〜と言い、美佐子は「病気の時にでも会えればいい」くらい。
子供さえいなければとは二人とも言わないが、明らかに邪魔にされている息子。ならばと、子供らしくはしゃいでみせる姿のむなしさ
更にむなしいのは、その息子の演技に気が付いている要の存在。美佐子が寝室で毎晩おいおい泣いているのもドン無視、冷たいとかじゃなくて人間としておかしい男
結婚当初の美佐子の初々しさだけ楽しんで、今は義父の妾さんに興味津々、肉欲はお馴染みの娼婦と紛らわせる周到ぶり。キライ・・・としか思えない
・だがこれこそ谷崎だと思う。細雪は多分、時勢が許せば、貞之助は雪子とセックス、妙子ともセックス、もちろん幸子とも励む、という事だったろうと思う。
本当は貞之助も、ハーレムの王者になるべき男だったと思うが、時勢のせいで普通の男になっている珍妙さ。細雪は読みやすい谷崎であり、蓼食う〜は、共感しにくくて読みにくい谷崎だと思う。
読みにくいだけで、どちらもああ卑怯なまでに谷崎だなと思う。 |
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