madeingermany

[PREV] [NEXT]
...... 2021年09月08日 の日記 ......
■ 無関心   [ NO. 2021090801-1 ]

■欲しいのは愛と金ですが。

この辺を延々書いているのが、漱石と谷崎なんじゃないかなと思います。例えば志賀直哉とかは、金持ちなのでそもそも「金があれば」「書かなきゃ暮らせない」という発想がないでしょう。

他、大体の古い作家さんは破天荒に暮らしていたイメージです。姪を妊娠させて自分はヒット作を書きながら海外に出かけたり(藤村)。北海道に別天地を求めたり(独歩)、女性記者と心中したり(有島)、漱石も荒れていましたが、他の作家さんも相当だったのかなと。



ともあれ、愛と金欲しさを「書く」事に全振りしたような作家人生は、漱石と谷崎じゃないかなと思います。

漱石の作品は珍野先生から津田まで、ずっとそんな感じです。延子の叔父の「ケンカなんか金があれば収まる」と言い切った感は、「金持ち喧嘩せず」という反証があるだけに重いです。




■愛の反対は無関心だという言葉がありますが。

一方で、愛していると言って、暴力や暴言、搾取しまくって、「愛しているから感謝しろ しないと殺す」的な事を言われるよりは、無関心の方がありがたい気がします。感謝しないと、地の果てまで追い詰めて殺す気なんだなあと思いました。

(竹淵の実父が大体こんなニュアンスで生きている。大人になって戸籍を勉強する機会があった時、どうやっても親子関係は切れないのだとしって軽く絶望した。

美味しんぼの山岡が、雄山は法的にも他人と言い張るけどムリ。それが出来ないから、みんな困っているんだよと)


さて

蓼食う虫の要が、まさにそんな男です。妻子に暴力や暴言はしないようですが、「あきらかに白昼に愛人とセックスしまくってきてスッキリしましたという顔で帰宅」等、ゲスの極みです。

どの辺まで時代性でいい訳出来るかなと思いましたが、戦前の話なのでオールオッケーじゃないかなと思います。古い民法だと、お妾さんも奥様も同じ戸籍に入っていたりします。



多分、美佐子の父もこういう考えの男なのでしょう。女が他所に男を作ると厳しく責め立てるけど、男が愛人を囲い、大金を毎月渡しているのは「甲斐性」とかたたえるあれ。

現に美佐子の父には、お久と言う愛人がいます。お久が23歳くらい、父が60歳になっていないくらいなので、ありそうな話です。お久に料理や着付け、音楽を身につけさせて、自分が他界したとも立派にやっていけるようにしているつもりらしいですが、アホかと。

アホなりに寛容かと言うとそうでもなく。

小説の最後、父は美佐子を散々いじめているのでしょう。女の道、婦道、妻として〜、要の不義は男の勲章だが、女は〜とかガシガシ言っている気がします。美佐子が、「自分は汚らわしくお久なんか連れ回している」と言い返しても、多分聞かないでしょう。「お久は女らしいだけで、お前は小賢しいだけだ」とか言って。

は〜とか思いながら読むんですが。

最後には、同じアホなら踊らにゃそんそんという古い言葉を思い出し、変に楽しくなってくるのが谷崎なのかなと思います。毎夜おいおい、しくしく泣く息子と美佐子は、要を忘れて生きればいい・・・

(それが出来ない。要は戸主って奴なので、妻子の命運は彼にしか決められない。かよわい息子と美佐子は、クズな要にすがるしかない人生)

...... トラックバックURL ......
  クリップボードにコピー

...... 返信を書く ......
[コメントを書く]
タイトル:
お名前:
メール:
URL:
文字色:
コメント :
削除用PW:
投稿キー: