■谷崎のエッセイを読んでいます。エッセイと言うには余りに情報量の多い文章です。
戦前戦中戦後の日本を語る文章と言えば、荷風の日乗ですが。荷風の方は美しく質の高い文章、谷崎とはまた違う味わいのある素晴らしい文章です、ただし。
・基本的に助平
・谷崎が人妻、他人の家のお嬢様大好きなのに対し、荷風はプロの女性オンリー。絶対に避妊していたらしい
・谷崎は人脈やコネが豊富なので、熱海や岡山の山の中でも割と暮らせるが、荷風の文筆以外の能力は非常に「低い」ので、彼の日誌を読んでいると非常に不安になる
・三回も空襲に遭った人は珍しいと言う
・当時の作家達は、あの手この手で疎開し、空襲を避けていたのに、何故荷風だけ三回もと思うが。
多分荷風が、そこそこ人のいる地域を選んで行動していたからだと思う。人脈もコネも、谷崎みたいな意味では持たない荷風は、金と知識と行動力で生きるのが基本だけど、もう荷風のセンスだとか価値観を生かせる場所が日本にはなかった
そこそこ人がいて、なんらかの利便性が期待できる開けた土地に行くと、つまり空襲に遭いやすいと言う事なのかもしれない。谷崎と一緒に岡山の奥の方へ行ければよかったけど、追い返す谷崎
岡山の方が便利でしょ?という谷崎の言い草だが、谷崎を文壇でメジャーにしたのは、刺青を絶賛した荷風だった。恩知らず!と言いたいが、谷崎にすれば「いずれ誰かが認めてくれただろうし」とか思っていそう
また、荷風の方が作家として先輩にあたり、性格の尖り具合は荷風の方が強く、金銭的財産も荷風の方があるので、谷崎の暮らしの安寧のためには「もてなすだけもてなして、帰ってもらう」しかなかったのだろうと思う。荷風が哀れでならない |
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