・で、結局妙子の「結婚資金」なるものは、あったのかなかったのかという話なんですが、細雪
雪子にはどこからともなく、結婚となれば金とお祝いの品などが滝のように集まりますが、別に「雪子の金」なるものがあった訳ではなく
雪子の結婚=蒔岡家の名誉の維持、なので、大垣の未亡人まで結婚式に出るとか言い出します。未亡人、雪子には「姉の夫の姉」であり、義兄の姉と言うよく分からない存在。あくまで辰雄が「家を継いだ」という立場なので、未亡人も蒔岡家の一部なのでしょう。
財産も、昔の商家としての仕事もない蒔岡家、最後のステイタスが雪子の処女性と、「立派な結婚」なので全員目の色が違います。
で、妙子なんですが
おばちゃんが言っていた様に、「こいさんのためのお金」が昔はあったかもしれません。鶴子夫妻が大阪にいて、華やかだったころは。
鶴子一家は既に大阪にいた頃から、段々金に困っていた訳で。仮におばちゃんのいう「こいさんの結婚資金」があっても、鶴子達が手を出していたでしょう
が、鶴子夫妻が鬼だドロボーだというわけではなく。戦前の話なので、「家長」という考えがあります。その家系で長男に相当する男が「家督(家族への監視権みたいなものか)」をつぎ、家族は監視・管理される代わりに、衣食住を保証される、という奴です
鶴子夫妻が妙子の「身の上」を、少なくとも結婚するまでは監督する立場だとするなら、妙子は「こいさんの嫁入り支度の金」を鶴子達に「奪われて」も「損」はないと言えます。
実際はそんなことはなく、成人した妙子の贅を凝らした暮らしは、奥畑家からむしり取ったものだと、下巻で判明します。
なら早い頃、奥畑家から蒔岡家に苦情なり相談なりすればいいじゃないと思いますが。そこはあくまで啓三郎の起こす恥と考え、啓三郎の母が取り繕っていたそうです。奥畑家では、どんなにか妙子が憎かったでしょう。
蒔岡家の方でも、こいさんと「駆け落ち」したことが新聞沙汰になったので、奥畑を嫌っています。なんなんでしょう、この関係
板倉が狙った「こいさんの金」なるものは、本当はなかったんだろうなと思います。妙子は妙子で、板倉のタフさに頼って生きようとし、板倉は板倉で、妙子というか蒔岡家の「金」欲しさも気持ちもあったのなら
板倉、結構悪い奴だったのか。実際、妙子の希望する生活水準を板倉が満たせないと思うので、結婚しなくてよかったんだろうと思われます。
何故、妙子がそこまで思い詰めるのかと言えば
鶴子・幸子・雪子の豪華な娘時代を知っているからなのでしょう。昔の蒔岡家の豪勢さ故の一幕でしたが、妙子は姉達のド派手さを見せられながら、どこかで何かが狂っていったのかもしれません。 |
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